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2017年10月20日

金沢おでんとコップ酒の小話

おでんを食べたくなりませんか?
一番身近に「おでん」を感じるのはコンビニなってしまった気がする。コンビニおでんが一年で一番売れる時期は、実は真冬(1月とか2月とか)ではなく10月11月と言われている。もう6~7年程前の話だが、B面企画の原型となる「旨いもんを食べる会」という構想があった。その時から候補として「おでん」が上がっていた。その時はまだ「金沢おでん」という呼称はなかったが、郷愁をそそる企画だった。最近になって、この企画を本気でやってみたいと思うようになった。まだ片町が遊び場だったころ、よく「おでん屋」へ行った。高砂や大関、菊一などが主戦場だった。人気の三幸や代名詞の赤玉には何か気後れして行かなかった。今になっても、高砂の美人姉妹のこと、大関の高齢の先代のこと、なかなか笑わない菊一のオヤジのことを、ときどき思い出す。高砂の保温ポットで注がれる燗酒をあおったり、大関の蟹面にも価格にもビビッたり、笑わない菊一のマスターから受け取る「どてやき」に手が震えたり、若い頃の金沢おでん物語は大人への憧れが詰まっていた。今でもY萩くんの「みひろ」へ行くと、必ず燗酒をコップで、と注文する。受け皿の上にコップが乗り、表面張力の限界まで燗酒がそそがれ、そこに口を近づけてグイっと、ひと口すする醍醐味は、何にも代えがたい大人のたしなみだ。一緒につまむ「すじ」も旨い。先日、朝の赤羽駅前の商店街で、早朝から酒とおでんを楽しむ群衆を目撃した。わざわざ訪ねたのに、臆して入店できなかった。駅前の公園に朝から酔っ払いがたむろし、パトカーが止まっていた。きっと日本の各地にこんなディープな場所があるのだろう。そこに引き寄せられている僕だ。カジュアルフレンチやスペインバル、熟成肉やオーガニック、ミシュランや食べログの評価点、そんなことばかりに翻弄される現代への反動なのだろうか。日本人にとっての「おでん」は深いよなあ。

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