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2018年11月23日

BARの夜話「石垣島の泡盛」

八重山諸島の島々には水がない。ちいさな島は、ほとんどがサンゴ礁の隆起によって生まれたので、サンゴ砂の地面を掘っても、固い琉球石灰岩が出てくるだけらしい。面積が大きくて、高い山があるのは石垣島と西表島だけなのだそうだ。山があれば雨が降り、長年蓄積された水が、川と谷をつくり海に流れ込む。だから石垣島は水に恵まれ、入植者も増えて発展していった。水のない周辺の島々は、この石垣島から水を曳いているのだそうだ。水があるところに酒が生まれる。だから石垣島には数えきれないほどの「泡盛」が生産されているのだと妄想していた。

この日の夜のホテルラウンジのカウンターには、20種類ほどの泡盛が瓶ごと並んでいた。ほとんどが透明の瓶に琉球スタイルのラベルが貼ってあり、一見しただけで泡盛だとわかるが、知っている銘柄はない。石垣島を中心とした本格的な泡盛ばかりなのだという。並んだ泡盛の中には大きな甕(かめ)に入ったものもあり、蛇口から直接そそぐスタイルが目を引いた。直前の食事では、ワインをあれこれ楽しんだので、もう十分に酔いが回っているのだが、目の前の誘惑に負けて、泡盛に手が出てしまった。立ったままで少量づつテイスティングできるのだが、何杯も飲むような度数の酒ではない。選んだ泡盛をロックで、ひと口味わって、これ以上酔わないように、炭酸水で割ることにした。おあつらえ向きに2種類のカクテルフレーバーが置いてあった。どちらも手作りのオリジナルらしい。島とうがらしが漬け込まれた赤いフレーバーを注いだ。甘みが加わって、一気に飲みやすくなる・・・・。この後どうしたかは覚えていない。この夜の記憶はここで止まったままになっている。

泡盛の名前の由来は諸説あるらしい。泡盛を高い位置から盃にそそぐと「泡」がたつ。その泡が消えると同時に、ほのかな香りが立ち込める。泡盛は、そんな「泡」を盛って香りを楽しむ酒なんだ、という説が一番きれいな気がするのだが。

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