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2019年02月22日

舌の記憶「究極のクロワッサン」

今日は美味しいクロワッサンのお話をしようと思う。しかし、それは美味しいパン屋さんのお話しではない。とある「バター」の専門店のお話しだ。

ある日のこと、散歩の途中でその店の前を通ったのだが、何年かぶりで行列が短いときに遭遇し、ラッキー、と思って並ぼうと思った。しかし、店の店頭には、お目当てのクロワッサンを始め、いくつかの人気商品が、すでに「完売した」ことが表示されていて、がっかりした。でも店内をのぞくと、奥のキッチンに焼き菓子が見えたので、もしかしたら、焼きたてが出るかも?と考え、ダメもとで並んでみることにした。記憶のなかの衝撃が、それほど大きかったからだ。

その店は、エシレ・メゾンド・ブール(?)という、フランスの高級発酵バター「エシレバター」の専門店だ。読み仮名が正確かどうかは自信がないので勘弁してもらいたい。もう10年ほど前のことだと思うが、丸の内ブリックスクエアという商業施設の開業の時に、日本に初登場した店だ。その当時、開店の10時には、すでに店頭に長い行列がつき、一日中それが続くという、ものすごい繁盛店だった。ほとんどの客はクロワッサンが目的だったと思う。その何年か後に、丸の内のホテルに宿泊した際、大好きなホテル朝食を我慢して、わざわざ朝から並んだことがあった。

そのとき、ようやく買えたのは、エシレバターをふんだんに使った3種類のクロワッサンで、有塩のもの、塩不使用のもの、そしてもうひとつ、なんだか忘れたが、どれも感動する三つの味のクロワッサンだった。美味しいという概念は色々あるだろうが、衝撃的な味だった。買ってからホテルに戻る途中も、ホテルのエレベーターの中や、フロントの前でも、紙袋から出てくる焼きたてのバターの香りが、とてもすごくて、恥ずかしかったことを覚えている。

そんな究極のクロワッサンの記憶を思い出しながら、この日、再び店内に入った。完売のすきまをぬって買えたのは、フィナンシェとマドレーヌだ。こんなに小さな焼き菓子なのに、1個300円もする(笑)。帰りの新幹線では我慢して、自宅に戻り、大事に1個食べてみた。とても濃厚なバターの風味、やっぱり美味しい。世の中の有名ケーキ店の焼き菓子も美味しいのだろうが、こんな個性的なやつは珍しいと思う。紙袋のメッセージカードによると、焼き菓子は2~3日経つとバターが馴染んでしっとりするのだそうだ。それはそれで楽しみだ。

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