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2019年05月17日

BARの夜話「グラスが主役のBAR」

久しぶりに弟が訪ねてきて、自宅で酒を飲んだ。9歳違いの弟は、梅田の阪急で見つけてきたという1本の「ジン」を抱えていた。見たことのないジンだった。ラベルにはDOCKYARDジンとか、CHATHAMドライジンとか書いてあるのだが、どれが商品名なのかもわからない(笑)。すでに封は切ってあり、残りの量は3分の1ほどだった。なんだ、飲んだ残りかよ、などと毒づいてみたが、本人いわく、飲んでみたら、とても旨くて、兄貴にどうしても飲ませたかったようだ。

さっそくグラスに注ぎ、香りを試すと、これは確かに上物の香りがする。さっそくロックで味わうことにしよう。口を付けると、するりと喉になじんで、鼻から独特の芳香が抜ける。とにかく香り豊かで、絶品だ。冷やして注ぐだけで、品のあるマティニが出来上がる気がしてくる。彼はトニックウォーターも持参していて(笑)、お薦めの飲み方はジントニックなのだそうだ。ライムを絞って、グイっと試す。旨い、何杯でもいけそうだ。でもライムは必要ないようだ、それほど薫り高い。だけど値段を聞いて驚いた。普通のジンの値段と、ひと桁ちがうじゃないか、1万円以上するジンなど聞いたことがない。慌てて、飲むペースを緩めて、瓶を返すことにした(笑)。
兄弟そろって酒飲みなのは誰かのDNAなんだろうか。この日は、新酒しぼりたて生酒とか、甘いタイプのクラフトビールもテーブルに並べて、楽しい夜を過ごした。そしてこの日から、安いジンをロックで飲むようになってしまった(笑)。

何年か前のことだが、シゴトで大阪に泊まる機会があった。その夜、大阪で単身赴任中の弟を呼び出し、一緒に食事をしたことがある。梅田にあるハービス某という商業ビルにある和食のダイニング「M」で待ち合わせした。一次会だ。このビルの当時の印象は、尖ったコンセプトのテナントばかりが入居する高感度な商業施設、だった気がする。この店も、天井が高い吹き抜けで、客席がすり鉢状に設けられ、下のオープンキッチンを舞台に見立てて食事する劇場型のような、そんな派手な店だった。この店と言うよりフロア全体が、豪華な内装でバブリーな雰囲気を漂わせていた(笑)。恐ろしい値段のメニューも並んでいたように記憶している。

そして、2次会は、弟が探してきたBARへ向かうことにした。高級ガラスのバカラショップに隣接する「B bar」という店だった。BARだから当然、照明は暗いのだが、カウンターはすっきりしていて、酒瓶もグラスも並んでいない。
バーボンかスコッチか、忘れてしまったが、オーダーすると、バーテンダーがカウンターのバック棚を開ける。開いた棚の中にグラスが数点だけ置かれ、それにスポットライトが当たっている(笑)。普通のバーならウイスキーの瓶が並ぶはずだ。しかしここは、グラスが主役の演出だった。
出てきたウイスキーのグラスは、細かなカッティングが台座から側面にまで施された。そんな繊細で、かつ重厚なロックグラスだった、この特徴は、まさにバカラの特徴だ。中の大きな丸氷にまで、バカラのロゴマークが刻まれている。これも、この店の演出のようだ。グラスが重く感じるのは、氷のせいではなくグラスの重厚感だと思う(笑)。今から思えば、グラスだけじゃなくて、皿はもちろん、照明器具も、無駄に豪華なシャンデリアも、きっとバカラ製なのかもしれない。ウイスキーの値段には、地代家賃以外にも、ガラス製品の償却費が含まれていたのだろうか(笑)。

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