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2019年08月02日

ミス尾道と坂道の街

尾道は、前評判通りの「坂の街」だった。海からすぐに山になるから、山の途中に人が住むことになる。それほど平地が少ない小さな街だった。狭い平地の海岸線に並行してアーケード商店街が伸びている。さらに並行して、国道2号線が走り、その隣を山陽本線が並んで走っている。その線路の下をくぐって山へ向かう道は、どれも急な坂道(階段)ばかりだ。昔から尾道に暮らせば、きっと足腰が強くなることだろう。足腰の弱い僕にとっては修行のような街歩きになった(笑)。尾道は戦火にあわなかったようだ。だから古い街並みや寺社が残り、開発が遅れ、独特のレトロな雰囲気を残した街になっていった。数々の映画の舞台になったのも、そんな背景があったからだと思う。

街歩きの起点の尾道駅は、今年3月に改装オープンしたばかりで、けっこうおしゃれな施設に変身したらしい。とは言っても昔の姿を知らないので、どっちがいいのか分からない。まだ午前中なのだが、ものすごい人の波だ。その大部分が観光客なんだろうと思う。みんな千光寺へ登るロープウエイの方向に歩いているように見える。楽な方法で登ろうと思うのは、僕だけではなかったようだ。この日のロープウエイは大行列で、係の女性たちが、てきぱきと行列の観光客を誘導し、山の頂上へと運んでくれる。ロープウエイの所要時間はわずか3分ほどで、山頂の公園からは尾道の街も、船が行きかう尾道水道や、向島まで見通せる。

山頂のこの辺りは、千光寺というお寺を中心にした一種の公園で、そこから下界へ降りていくルートは「文学のこみち」と呼ばれ、文学の一節が刻まれた、たくさんの石碑が続く坂道だ。旅の前に薬剤師のおじいさんと約束した僕は、林芙美子の碑を探していた。僕にとっては、この旅の唯一のノルマだ(笑)。ようやく見つけて写真を撮ったが、ピンボケだった(笑)、失敗だ。さらに下山を続け、住宅地エリアへ入ると、坂道は、コンクリートの階段へと変わり、カフェの看板が増えていった。
道の途中に、いきなりクールで美しい建物が出現したので、磁石に惹かれるように敷地に入り、なかのカフェに入ることにした。どうやらデザイン集団が仕掛けたホテルらしい。空間の使い方がぜいたくで面白い。古い街であればあるほど、このような現代的なセンスとの共存が重要だと思う。街に新しい息吹を持ち込むのは、どこも、こんな新しいテイストとスタイルだ。

駅前商店街というベタな名前の長いアーケードでは、尾道ラーメンの看板をたくさん見た。いずれもすごい行列ばかりだ。ちょうど「尾道みなと祭り」の行事と重なっていて、子供たちのパレードなどが行われていた。パレードの先頭には「ミス尾道」が歩いていて、こちらが手を上げると笑顔で目線を送ってくれた。うん、こっちは、いい写真が撮れたな。

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