神楽坂の路地裏でワインとやきとり
石畳、木塀の一軒家、のれん、盛り塩
東京ローカルグルメ
この昭和オヤジは「路地裏」というコトバに弱い。その角の向こうに、少し薄暗い石畳の小路なんかがあるとグッとくる。小さな明かりが漏れていて、間口が少し狭くて、のれんに隠れているような店を見つけると、おぅ小粋な店だなぁ、などとそそられてしまう。
さて今回は、そんな路地裏の街、ちょっと小粋な雰囲気にあふれる街、その代名詞のような街「神楽坂」のハナシ。そして本題は、東京ローカルグルメの代表「やきとり」のお話だ。
ちなみに神楽坂には粋な名前の小径が多い。かくれんぼ横丁、見番横丁、神楽小路、芸者新道、地蔵坂、ゆうれい坂、面白いところでは熱海湯階段というやつもある。まぁ名前なんかなくても構わないが、あればあったで、気持ちのギアが一段上がる感じかな笑。
予約の時刻まで少し時間があるからと、神楽坂下から散歩がてらに坂をゆっくり上っていく。この街は夕方になると「夜のスイッチ」が入ったように趣を変える。日中のそれとは違って大人が増えてくるからかな、ちょっと艶が出てくる気がする。
少し遠回りだが、この日は毘沙門天(善国寺)で手を合わせたりする。酒を飲むだけだから心を整える必要もないのだが、昭和オヤジはちょっとカッコつけてみるのだ。
さて、今夜の店へ向かおう。毘沙門天の筋向いあたり、左手の本多横丁へ入っていき、今度は右の芸者新道へ進む。ここはなだらかな石畳で、いい雰囲気の小径だ。石畳と敷地の境界に店名が入った小さな足元あんどんが出ている。これが目印だ。
ここは木塀に囲われた一軒家で、敷地に入ると木塀の陰に大きなのれんが掛かっている。足元にはひっそり盛り塩が置いてある。
そもそも家の玄関先にある「盛り塩」には浄化、厄払い、魔よけのような意味があるらしい。お店(ご商売)の場合は、さらに千客万来や商売繁盛の願いが込められるのだそうだ。雰囲気作りはなかなかいいってことかな。
この店は有名なやきとりの一門だが、ここだけは屋号が違っていた。まぁ味が同じなら問題はない笑。自慢のやきとりをコースで出し、これまた自慢のナチュラルワインと一緒に楽しむのがおすすめらしい。まぁワインの品揃えは立派だった。
興味を示した僕に、ここぞとばかりにワインのおすすめトークが連射される笑。とはいえ、僕たちは猛暑の散歩を終えたばかりで、とにかくビールが欲しいのだ笑。ワインは後にして、とりあえず冷えたビールを飲ませてくれないか・・・、そんな会話で場が和んだ。
ワイン推しだから、やきとりは創作系の変化球かな?などと考えていたが、とてもシンプルに、素材感を前面に出した正統派の構成だった。さすが名門だ、やきとりはどれも美味しい。ちなみに終盤の「ふりそで」と「レバー」がすんげ~旨かった。
ワインでは、いま話題の「オレンジワイン」がおすすめされていた。もちろんオレンジで作った甘いワインではなく、赤、白、ロゼに続く第4のワインと呼ばれる本格派だ。ロゼは黒ブドウで作るのだが、白ブドウを皮と一緒に醸したそれをオレンジワインと定義するらしい。これがとても旨い。
コースの〆に出てきたのは、珍しくせいろ蕎麦だった。軽くたぐってひと息つくと、寿司屋のような大きな湯呑でお茶が出てきた笑。まぁそんな演出も楽しかった。
神楽坂の路地裏の空気感は、不思議と訪れる人を和ませるってことかな。おすすめの一軒を見つけてちょっと嬉しい夜だった。
▲美味しい焼き鳥とワインのアルバム(タップして右へ)
ちなみに「やきとり店」と同じようなジャンルに「やきとん店」と「もつやき店」がある。串に打つのは同じだが、やきとりは鶏だけ、やきとんは豚だけ、もつやきは主に豚の内臓に特化する。詳しくは分からないが、たぶん東京的な区分だと思う。
日本中どこだって、やきとり店にはそれらが全部売られているから、もしかすると東京だけの言い方(店の区分)なのかもしれない。こっちは専門的なんだぜ、ということかもしれないな。だから僕にとっての東京のやきとりはローカルフードなのだ。
さて、どうやら僕たち老夫婦は、軽い熱中症だったかもしれない。そんなに酔ってないのに体がちょっと重い。なので、狙っていた「神楽坂の路地裏のバー」はキャンセルした。何かやらかす前に、さっさとホテルへ戻ろう笑。悲しいが昭和オヤジは歳には勝てない。