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2026年09月18日

本の時間「それは趣味という名の現実逃避かな」

純喫茶巡りを続けるおじさんのハナシ
たぶんだが、ときどき本屋さんに立ち寄る人なら、この本の存在を知っているのではないかと思う。ただし、50~60歳くらいの年齢の、いわゆる「おじさん」に限ったハナシだ。僕はさらに年長者だが、それでも簡単に引っかかった。
理由は、本の表紙だ。うだつの上がらなそうな、でも善人そうな、そんなネクタイ姿の「おじさん」が珈琲を飲んでいるイラストだ。イラスト横の、本のタイトルも平易で分かりやすい。まぁ見事なアイキャッチと言っていい。
そして、手に取ってしまうおじさんたちの共通項は、喫茶店が身近にある人(あった人)のような気もする。そんな人は「自分のことかも」と思ってしまう可能性が大だ笑。

人によって時期は違うのだろうが、おじさんという生き物は、いわゆる「定年」を迎える以前に、必ずどこかで第2の人生のことを考える。一般のイメージより少し早いタイミングということだ。
考えるきっかけは様々だ。本人のこともあるし周囲の変化の場合もある。自分の仕事のこと、病気や老後のこと、妻や子供のこと、会社の事情、親の介護・・・まぁ色々だ。
でも多くは考えるだけのことで、その一歩を始める人は少ない。だから「一歩を進めた人」が周りにいると妙に気になってしまうはずだ。同時に、その人が苦労していれば「やっぱりなぁ」と思ったりする。

本作が文庫化されたのは今年2月らしいから、まだまだ新作と言っていい。なのでネタバレにならないように気を使って書こうと思う。
主人公は、バツイチ57歳、いまは無職のおじさんだ。再婚して妻子はいるが、妻は家を出て娘と暮らしている。つまり妻とは別居中だ。
実は、ちょっとした苦い過去を持っている。妻の反対を押し切って、退職金をつぎ込んで始めた「喫茶店」を半年で潰したのだ笑。そして現在は友人と会ったりしながら次の仕事先を探している。
物語のタテ軸は、そんな主人公が趣味としている喫茶店めぐりのハナシだ。まるでロードムービーのように、様々な街の喫茶店や、そのメニューの描写がたくさん出てくる。
本作の特徴だと思うのだが、まるでグルメレポートのように詳細な描写が続く。これが凄いのだ。そのモデルの喫茶店がたぶん実在するような気がしてくる。

そしてヨコ軸は、このおじさんの人生のハナシだ。再就職には苦労するし、過去は引きずる。妻には「あなたは何も分かってない」と言われるし、娘にも、友人にも、再会した1度目の元嫁にも「あなたは分かっていない」と言われ続ける笑。
小説だから言い方が誇張されてる気もするが、読者が同じおじさんなら「もしかして俺もそうなのかな?」とドキッとする笑。
とはいえ彼の場合は、趣味の喫茶店めぐりになれば、意外な行動力を発揮して熱中できるから、そんなことは後回しになる。まぁ現実逃避のような気もするかな。
ストーリーは穏やかなのだが、読者はいつのまにか主人公と一緒にアレコレ考え始めるのかもしれない。まぁ誰にだって、よく似た経験はあるのではないかとも思う。
そして、そんな読者(おじさんたち)は、終盤に向けて、徐々に彼を応援したくなっていくはずだ。主人公のおじさんに自分を重ねてしまうのかもしれない。本作が面白いのはそんなところにある。

さて、もうお分かりだと思うが、食いしん坊の僕は、前述の「実在するかも」のうち、思い当たる店をちょっと調べたりした。そして「これかも」というやつをいくつか見つけた。ようするに一度は行ったことがある店とか、知っている喫茶店だ。
だから、機会があれば再び訪ねてみたくなった。たぶん京都のやつは行ってくると思う。とはいえ、僕の場合は単なる興味だけだから、現実逃避とは違うよ笑。

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