72個の利きちょこ(ききちょこ)
利き酒会(新酒しぼりたて生酒)の報告
前日になって、悪友K中くんに会場までの同行を頼んだ。大きく重い荷物を一緒に運んでもらうためだ(笑)。会場の「みきやん」には早めに着いて、大きな荷物を降ろし、会場に運び込んで、二人で黙々と「利き酒会」のセッティングを始めた。重かったのは8種類の酒と、箱に一杯つめこんだ酒器のせいだ。日本酒の酒器には様々なタイプのものがある。今回は少しカッコつけて「利きちょこ」を使うことにした。白いぐい飲みで、底に蛇の目の模様が入ったやつだ。これはプロも使う本格的なもので、白い部分で酒の色や透明度を見たり、青い蛇の目の輪で、酒の光沢などを見るのだという。まあ素人の僕たちにとっては「利き酒会の雰囲気」が大事なので、酒屋の好意に甘えて「利きちょこ」を貸してもらうことにしただけだ。地酒専門店のオヤジから見ても「新酒生酒」だけの利き酒会、ましてや素人集団主催の会は、珍しいのだそうで、僕たちの企画に驚きながら、一生懸命対応してくれた。12月から出回り始める新酒のしぼりたて生酒(原酒が多い)は、数量も少なく、年明けには順に完売してしまうようで、今回のために12月から候補品を取り置きしてくれることになっていた。中でも、話題の「農口尚彦研究所」や、希少品の「かちこま(ひらがなの勝駒)」は入手も難しい酒だ。選んだ生酒は、合計8種類。その8品を試す順(飲む順番)に、1番から8番までの番号と商品名を順に書いた「利き酒専用のテーブルマット」を自作して、セッティングが始まった。マス目に並べた商品名の上に、白い蛇の目の「利きちょこ」を8個並べる。参加者は9人なので、9セット、合計72個の利きちょこがテーブルに並ぶ光景は、なかなか本格的な景色になっていた。グラスに水を注ぎ(やわらぎ水)、8種類の酒びんを並べて、写メ(撮影)の時間を取り、いよいよ利き酒の儀式がスタートした。まず4種類(1番から4番)の生酒を順に注ぎながら、オヤジに書いてもらったカンニングペーパーを使って、商品説明し、順に口に運ぶ。全員が「うーん」と無言で、リアクションも少ないので(笑)、一気に残りの4種類も並べることにした。8種類並ぶと気分も違う。
みんなの細かなコメントはともかく、8種類の生酒を順に楽しむのは珍しい経験で、とても楽しいことだった。まあどれも旨いのは間違いない。参加者はそれぞれ、単純に「どれが旨い」「これが好き」などと会話しながら楽しんでいった。ちなみに使った「利きちょこ」は一番小型だが、60mlの容量なので、8種類を満杯に注ぐと、それだけで480ml、つまり三合半くらいの量になる。立て続けに飲めば間違いなく酔っぱらう。だから控えめに注ぎ、ゆっくりしたペースで楽しむことにした。そして8種類の利き酒の儀式が無事終わり、好きな料理をオーダーし、新年会に移っていった。もちろん残った地酒は飲み放題だ。みんな、お気に入りの生酒のお替りが始まった。途中で料理を運びに来るたび、みきやんにも好きな酒を飲ませ、彼は彼でぐびぐび飲んでいた。みんなの会話は、今度のA面本番のこと、2月の東京企画のこと、次のB面企画のこと、などなど銘々に盛り上がっていた。次回のリクエストもあったので、今度は「ひやおろし」をテーマに第2回を企画することにした。
楽しんだ生酒の順番は以下の通り。
1番 天狗舞・純米吟醸「冬吟」
2番 手取川・純米生原酒しぼりたて
3番 遊穂・純米無濾過生原酒
4番 黒龍・「垂れ口」本醸造うすにごり生原酒
5番 白龍・初しぼり純米生原酒
6番 常山・純米吟醸槽場(ふなば)初詰
7番 農口尚彦研究所・本醸造無濾過生原酒
8番 勝駒・「かちこま」しぼりたて本生
人気があったのは、黒龍「垂れ口」、かちこま「本生」、天狗舞「冬吟」の三つだった。