酒のみの言い訳「血の色」
初老を過ぎ、2~3年経った頃だったと思う。その日は福岡便に乗るために早起きした。猛烈な二日酔いだった。クルマを出し、トランクに荷物を積み、いよいよ出発というときに、白のセダンの助手席側のドアの外側に「真っ赤な血」が大量にこびりついているのを見つけた。人身事故か?、驚くとともに恐怖が走った。昨夜遅くに、代行運転で帰ってきたはずだ、事故ではないはずだ。う~ん、そういえば帰る途中、気分悪くなった僕は、助手席の窓を開けて吐いていたことを思い出した。つまり、それは僕の血?、ということは「吐血だ」と、背筋が凍った。慌てた。
いやいや冷静になれ、と、消えた昨夜の記憶を恐る恐る呼び戻した。そういえば友人デザイナーの2度目の結婚(笑)のお祝い会で、郊外の小さな居酒屋に行った。彼の行きつけの店で、彼の仲間や新婦の友人が次々に加わった。その中に偶然、僕の古い知人女性がいて、そのご主人が同席していた。そのご主人は僕より2~3歳若く、後に衆議院議員になるのだが、その日は「政治を職業にする一般人」の彼と飲んで語り合った。ビールから日本酒、そしてワインと、話は盛り上がり、しこたま痛飲した。空っぽになったチリワインの瓶が並んだ・・・。
ん?・・・、チリワイン → 赤ワイン → 赤い液体・・・しこたま飲んで記憶が飛んで・・・、そうだ、窓から吐いたのは赤ワインだ(笑)。クルマのドアの血の正体が判明し、パズルの欠けたピースが埋まって、ひと安心した。この恐怖の時間は、数分のことだが、強く反省したのは言うまでもない。予定外の洗車に時間が取られることになった。血の色をした赤ワインは案外簡単に流れた(笑)。思わず薬箱からキャベジン(胃薬)をつかんで荷物に加え、小松空港に急いだ。政治家と飲んではいけない。いや、もうチリワインは飲まない。酒に弱くなった自分を棚に上げて、頭痛を我慢しながら、そう誓った(笑)。