深夜TV「音楽オタクになれる番組」
売り出し中のピアニストのK塚信也が「ピアノは楽器の王様なんです」とキメ顔で吠えていた。一緒に出演していたバイオリニストのN某は、その発言に異議を込めながら、ニヤニヤ笑いながら黙って座っていた(笑)。クラシックの本物の演奏家、音楽家である彼らは、ともにキャラクターが立っていて、カメラの前で真剣にクラシックの世界を論じる。楽器の歴史や、本質的な構造や機能を解説する。そんなディープな世界を垣間見せる、この番組は、とても面白い。
ピアノ編の続編では、クラシックピアノ、ジャズピアノ、ポップスピアノの三つのジャンルを、実際に演奏し比較しながらの解説が続く。構成がどうとか、コード進行の特徴がどうだとか。ピアノを弾けない僕でも、思わず「やれるんじゃないかな」などと、勘違いしながら楽しめる。
この番組「Kジャム完全燃SHOW」はフツーのバラエティー番組とちょっと違う。もともとはタイトル通り、スタジオにアーティストを招いて、一夜限りの「ジャムセッション」やトークを繰り広げる音楽バラエティー番組だったそうだ。毎回のテーマ設定も面白い。いつの頃からか、明らかに、ニッチでディープな方向へと舵を切り、その結果、今までにない、とても興味深い、もっと言えばディープでニッチで、そこにカルチャーを感じる番組になっていった。
サムライギタリストのMや、O尾コータローの超絶テクニックを同時に、解説付きで観れるのは、ある種の感動を覚える。そんなギタリスト特集やベーシスト特集などの、プロのプレーヤー特集は特に面白い。音楽は聴くだけではなく、観て楽しむものなんだね。彼らの信じられない超人技は、素人の僕でも、時間を忘れて、観ていられる。
とにかく、毎回のゲストは全て専門家だ。有名な音楽プロデューサーやスタジオミュージシャンなどのプロ中のプロばかり。だから、その発言の視点や解説がリアルでディープで専門的だ。それがとても面白い。その日は「サザンオールスターズ」がテーマだった。プロが選ぶサザンのランキングは、ファンのそれと違っていて興味深い。以前の「ユーミン」特集もそうだったが、スタジオのゲストは、みんな温度が高くて、細部まで語りつくす。話が長くて編集も大変だろう、などと想像している。オタクはいつも面倒くさい。
そして、この日は、満を持して?「クイーン」の特集だった。ランキングを通してクイーンの凄さを解説する構成だ。音楽プロデューサーH某は、他の仕事をキャンセルして収録に参加した、という熱の入りようだ。番組後半、ブライアンメイの手作りの愛器「レッドスペシャル」のオフィシャルモデルを作る日本人が参加して、実物を持ち込み、一般のギターとの違いを語っていた。話が深いのは、面倒だが面白いなぁ。