本の時間「強い個性、違和感、存在感」
ある日、日本の小説がタガー賞をとったというニュース映像が流れた。授賞式に登壇した作家さんの映像だった。
タガー賞?・・・もちろん聞いたことがなかった(申し訳ない)。解説によれば、世界でも権威があるとされる推理小説の賞、英国推理作家協会賞=「ダガー賞」の翻訳部門に、日本人作家の作品としては初めて選ばれたらしい。
なるほど~、とは思ったが、そもそも推理小説はあんまり得意ではないから、そのニュースのことも、小説のタイトルもすぐ忘れてしまった。ただ一点だけ記憶に残ったことがある、それはインタビューを受ける作者さんの印象だった。
うまい表現が見つからないが、個性的?なのだ。テレビだからとても謙虚なコメントなのだが、よくある作家センセイたちのそれとはどこか違うように感じた。違和感?、強い存在感?、まぁそんなことだ。

いつものように近所の本屋で、棚に並ぶ文庫本を眺めていた。その本があることがすぐにわかった。装丁に使われたイラストが独特(というか強烈)で、すぐ目に飛び込んできたのだと思う。あぁ、あの小説だと、忘れていたタイトルもすぐに思い出した。
そもそもタイトルそのものに違和感がある笑。ババヤガって何なんだ。
手に取って、帯をながめたら「血まみれ」「ヤバかった」「キル・ビルやジョン・ウィック」そんな文字が並んでいた。極め付きは「シスター・バイオレンス・アクション」だ。なんだそれ?。
そんな、ひとつひとつの小さな違和感が興味となって、そのまま買うことにした。読み始めたのは翌日の新幹線だが、面白くて止まらなくなり、その日のうちに読み終えてしまった。

ヤクザが出てくる。その汚い世界も描かれる。主人公は女性だが、彼女の本格的な喧嘩のシーンがある。ヤクザの一人娘や、サイコのような変態野郎も出てくる。反吐が出そうなセリフや描写も出てくる。
素人の僕がこう書くと、暴力を描いた既存の小説に出てくる要素のようになってしまうが、本作で描かれるそれは既存のものとは違うのだ。特に2人の女性キャラクターが大きく違う。だから、ストーリーは読者が思ってもみない方向へと流れていく。
それは作者の卓越した表現テクニックでもあるし、登場人物の内面、つまり内側にある本音や複雑な心理が、独特の視点でていねいに描かれているからだと思う。

僕には本作が推理小説かどうかは分からない。でも〇〇小説と言われる作品には何となくルールがある気がする。キャラクターの「型」みたいなことかな。人間は弱くて愚かだとか、女性は女性らしく、悪者はやっぱり悪いとか・・・。だから僕のような高齢の読者は安心して作品の世界を楽しめる。
その点で言えば、この作品のキャラクターは型にはまらない。たぶん作者にとっては「そんな押しつけは大嫌いだ」って感じだ笑。それが違和感や個性の正体で、本作の魅力なんだと思う。
ちなみに「ババヤガ」だが、その意味を調べると、あぁそういうことか、と分かった気になる。でもきっと、意味はもっと深いところにある気もしてくる。そうなのだ、このモヤモヤする感じがとても面白いのだ。









