青春のかけら「学生街の喫茶店”27”」
自分の成人式の日は式典に出ず、喫茶店にいた。バイトしていたからだ。その店は「27」という店名だった。27期とは何の関係もないが「27(Tow-Seven)」という喫茶店だった。香林坊1丁目の「27番地」という住所にあったからそんな店名になったと、後に知らされた。立地が良くても内容がだめならヒマになる、という世の中の常識を学んだ店だ。
リーズナブルな価格や商品構成が女子的だったからか、来店客は女子高生(いわゆるセーラー服)が多かったような気がする、いや当時の僕はそんなことにしか目に入らなかったのかもしれない。狭いキッチンでサンドイッチやワッフルやチョコレートパフェを毎日毎日イヤというほど作っていた。バイトとはいえ稼ぐことは尊いと学んだ。
バイト仲間には美人の短大生やバイセクシャルな美大生などがいた。僕の友人たちや先輩後輩も時どき訪ねてくれた。店には「落書きノート」が置いてあり、お客さんも従業員も、観光客も女子高生も友人たちも、様々な日常をエッセイやポエム、イラストなどの形式で描いていた。それぞれのコメントへの返信もよくあったが、今の時代のように炎上することなどなかった。
そのうち健康を理由にオーナーが店をたたむことになり、困った大家の依頼で、20歳の僕が「雇われマスター」をすることになった。そんな若造に出来ることなどなく、打つ手はことごとく失敗し、その店は簡単につぶれた。若輩者という言葉や、現実は厳しいのだ、という当たり前のことを学んだ。
閉店に前後して、北国新聞にその「落書きノート」がデカデカと掲載されたが、もはや後の祭りだった。この喫茶店での経験は、ただの若者にたくさんのことを教えてくれた。後の人生に大きく影響した。閉店した頃の記憶はもうないのだが、その落書きノート数冊をなぜか悪友K中くんが大切に保管していた。そして先日、40年の時を経て僕の手元に届いた。もう恥ずかしくて直視できない内容なのだが、そのページに青春のカケラが載っている。
当時の落書きノートに描いた僕のイラスト。悪友K中くんをモチーフにした下手な「ライオン丸」だが、彼はとても気に入っていた。LINE桜27期に登場する彼のプロフィール写真はライオンなのだが、ルーツはこのイラストなのではないかと、ひそかに想像している。