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2020年08月29日

トナラーのトナリング

大事なクルマを「ドアパンチ」された経験がある人は、けっこう多いと思う。いわゆる狭い駐車場で、ギリギリに停まった車のドアを傷つけられた経験のことだ。おそらく「犯人」は、自分の車のドアを勢いよく開けたときに、隣の他人のクルマのドアにぶつけるのだ。やられた方は、間違いなく隣に停まっていた「あのクルマ」にやられたはずだ、と分かっても、そいつはすでにいないので、あきらめるしかない、実に不条理な事件のことだ。
クルマを大事にしていれば、当然のように気になる。僕はそんな被害経験のある一人なので、クルマはなるべく「遠く」に停めることにしている(笑)。1回目はそうでもなかったが、2回目の被害がひどかったので、そんな行動をとるようになった。立体駐車場なら上の方までグルグル上がるし、ショッピングモールなら、周囲が空いている場所を探す。大事なクルマのため、ということより、傷つけられる心配をしなくていいのなら、多少遠くでも問題はない。日頃、あまり歩かない僕にとって、遠くの駐車場から歩くのは、ささやかな運動でもある(笑)。

でも最近は、「トナラー」というやつが存在するので、そうも安心していられなくなった。他のクルマから離れて停めたはずなのに、つまり、駐車場はたくさん空いているのに、わざわざ「隣に停める」やつのことを「トナラー」というらしい。そして、そんな行為のことを「トナリング」というのだそうだ。そんなことを知ってから、トナラーによるトナリングが実に多いことに気づいた。なんで、わざわざ隣に停めるんだ、何を考えてるんだ、と最初は思ったのだが、どうやら独特の理由があるらしい。
理由のひとつは、横のクルマを目印にして駐車する、つまりクルマが横にないと駐車しづらい、という心理らしい。なんとなく分かるような気もするが、それなら、もっと建物に近い場所でもいいだろう、などと思ってしまう。他には、間隔を開けるのは嫌で、順に並べないと気が済まない、という心理とか、他車の陰に置くことで、傷つけられる心配がなくなる、という理由とか、自分のクルマを自慢するためにフツーのクルマの横に並べる心理、などがあるのだそうだ。どれも「どうでもいいわい」と言いたくなる理由ばかりだ(笑)。

ちなみにトナラーは駐車場のことだけではなく、電車や映画館で、他の席が空いているのに隣に座るやつのことも、同じようにトナラーと言うらしい。でもそれは、ある種のストーカー行為だ、と言いたいところだ。ヒトには個別の「パーソナルスペース」がある。つまり、その範囲の中に他人が入ってくると、気になって嫌な気分になるスペースのことだ。だから誰だって「他人の侵入」は嫌なはずだ。いまなら、ソーシャルディスタンスが当たり前だから、そんなトナラーは、一時的に姿を消したように見えるのだと思う。
そもそも僕は、電車やバスに乗るときは、できれば隣に人がいない方がいいから、結局、立ったままのことが多いし、列に並ぶときには、自分の背後の気配に敏感になってしまうタイプだ。決してゴルゴ13のように背後に立たれると反射的に殴るわけではないが、その間隔を詰められて荷物で押されたりするとムッとする(笑)。だから最近は、世相のおかげで助かっているのかもしれない。
ハナシが横道にそれたから、再び話を駐車場に戻そう。ともかく、トナラードライバーの皆さん、遠くに停めているヒトには、それなりの事情があるんだ。頼むから、もうちょっと相手のことを考えて駐車しようぜ。

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