京都駅前のフードホールで
電車に乗るまでまだ少し時間があるから、安いやきとりで一杯やっていた。失礼な話だが、あまり期待はしていなかった分だけ、やきとりはあんがい美味しかった。生ビールが一気に空になる。これで帰りの電車は爆睡だ。
ここは、京都駅前に新しく誕生したフードホールだ。ビルの地階のワンフロアに、小さな飲食店が18店も入っていた。当たり前だがそれぞれの店にはカウンター席やテーブル席がある。この点では従来の飲食街と何も変わらない。
でもここはフードホールだから、それに加えて「共有テーブル」というやつがたくさんある。こっちに座れば、どの店の商品でも注文することができる。
やきとりとハンバーガー、餃子とパンケーキと寿司・・・ちょっと無茶だが、まぁそんな楽しみ方ができる。僕みたいな、つまり変な欲張りには嬉しい仕組みだ。何より全部で450席もある巨大空間だから、結構便利だと思う。
せっかく京都まで来たのに・・・と思われても仕方がないが、むしろ京都だから、フードホールだって面白いかも・・・、どうかなぁ、と興味優先でやってきたのだ。
狭い階段を降りていくと、入り口にあるのは大きなメッセージボード(デジタルサイネージ)だった。どこかの小説の抜粋?のように文章だけが並んでいる。
内装デザインとしては違和感があるから調べたら、ある有名な詩人さん(お若い女性)の作品らしい。そんな彼女の文章がアチコチにディスプレイされている。さすが京都、ちょっとセンスが違う笑。
実は、このフードホールの所在地は、京都駅前の京都タワーの地下なのだ。そう、あのロウソクみたいな京都タワーだ。2年前の全面リニューアルのときに誕生した新しいスポットらしい。
ちなみに(たぶん同じ時期に)地元の有名メーカー(大企業)が京都タワーのネーミングライツ(命名権)を取得して、今ではその冠名がついている。ビルの見た目は昔と変わらないが、どんどん時代に適応していく、これも京都らしいってことかもしれない。
京都タワーができたのは昭和28年らしいから、僕たちの年齢とほぼ同じだった。そう聞くと、なんか少し切ない笑。旅にやってくる僕にとっては、訪れるべき歴史的な文化遺産という訳でもなく、昭和の代表建造物で時代遅れの象徴みたいな気がしていたからだ。
誰だって時代遅れって言われるのはやっぱり嫌だなぁ。こんな僕たちも、時代の流れに合わせて旅のスタイルもアップデートしていかないとね。
そういえば、今回の京都散歩の足に使ったのは地下鉄だった。些細なことだが、僕にとってはこれも小さなアップデートだ。いつもなら面倒臭がってすぐにタクシーを捕まえていたが、京都の渋滞がひどくなるにつけ移動にイライラしていた。京都のバスはいまだに苦手だが、地下鉄や電車なら時間に正確だから、まだ気が楽だ。
実は、地下鉄(烏丸線と東西線)の路線図をまじまじと見ていて、行ってみたい場所がたくさん浮かんできた。有名な寺社仏閣と違って、概ね、現代の京都カルチャーを味わえる場所ばかりだ。歴史的文化遺産に飽きたのではなく、若い人たちが支持する現在位置の京都を味わいたいってことだ。
日帰りの今回は時間もなかったから、若い京都はまた今度だ。京都タワーのフードホールで、老舗のやきとりを食べながら、京都カルチャーの新しい一面を感じて、ちょっと考えてしまったかな笑。
さて、最後におまけの話、例によって失敗談だ。
いつものように京都駅の伊勢丹で、自宅土産を買ってきた。漬物やちりめん山椒そして鯖寿司(いづう)だ。まぁ僕たちの定番中の定番で、特に鯖寿司は帰宅後の今夜の晩ごはんだった。
それを、新幹線の荷物棚に置き忘れた・・・、もう笑うしかなかった。初体験だがこれも年寄りアルアルかな、まぁやらかしたのだ。金沢駅の忘れ物センターに(これが遠いんだけど)初めて行って、手にできたのは翌日夕方のことで、鯖寿司は安全上の理由ですでに廃棄処分されていた。
アラ古希の老夫婦の「旅のアップデートの対象」は、まだまだ範囲が広そうだ。