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2018年01月19日

探偵ババー、の小話

いわゆる番宣番組に「大泉洋」がさかんに出演していた。「いいんでないかい」「なまら旨いっしょ」と北海道弁で話す彼は札幌代表のような俳優として有名だ。コメディーから大河ドラマまで引っ張りだこの印象がある。主演の彼が紹介する映画の原作者の名前が出てこなくて、検索したとき入力をミスって「探偵ババーにいる」と入力してしまい、ひそかに一人で笑ってしまった。探偵ババー?はないだろう、老人キーボードのアルアルだ。正しくは「探偵はBARにいる」という映画で、小説の原作者は「東直己」だった。ずいぶん昔の話だが、札幌に住んでいた時期がある(もう30年以上前の話)。5月のGW直後なのに、アパートの窓を開けると小さな軒先に、まだたくさん雪が残っていた。北海道の春はそんな感じだった。住んでいたのは札幌市内の南9条の中島公園あたりで、少し歩くとネオン街につながる場所だった。そのネオン街は、いわゆる「すすきの」とよばれるエリアで、アジア最北の歓楽街とよばれ、飲食店や風俗店などが入居するビルが数えきれないくらい林立するきらびやかなエリアだった。明るい表通りから裏道に入ると怪しい雰囲気に満ちていて、若い僕にはとても魅力的な街だった。しかし誰もが驚くほど、とても健全な街で、深夜3時4時になっても、若い女性グループが平気で歩いていた。深夜営業のラーメン店の前で、別れ際に「したらねー」と笑顔で手を振る彼女たちは、まるでオヤジギャルのハシリのように思えた。そんな「すすきの」の裏路地に大好きになった居酒屋がある。木造平屋の地味な店構えで、狭い店内の中央にカウンター、そこに「炭火の炉」があり、巨大な焼き網の上で干物を焼く店だ。焼くのは60代位の妙に品のある女性(女将)で、無口で笑わないからか、店内はいつも静かな雰囲気だった。炉の上に大きな「カメ」が吊ってある。カメの中身は日本酒だ。注文すると、そのカメから「ひしゃく」で酒をすくい、大ぶりの湯飲みに注いで提供される。炉の遠火でつくる燗酒だ。旨い、味がどうということではなく、雰囲気が旨いのだ。無口な女将が「今日のホッケは羅臼だから旨いっしょ」といいながら酒のお替りを渡してくれると、常連になった気分で嬉しくなったものだ。店内の壁や柱は干物の油煙であめ色、食べた翌日まで全身にホッケの匂いが残るような店だ。とても誰かを招待するような店ではない。だから思い出に残るのだろう。10年程前に札幌へ行く際に調べたところ、まだつぶれずに営業していて安心した。大好きな北海道、中でも札幌は格別だ。いつか27期の仲間たちと、あの居酒屋で飲みたいものだ。ちなみに小説の中の主人公の探偵は、僕の大好きなすすきのを舞台に活躍し、毎晩BARで酒を飲んでいる。ハードボイルド調なので飲むのはウイスキーだ。たしかに羅臼のホッケとカメ酒では、ハードボイルド映画にはならないよなぁ。

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