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2022年12月03日

BARの夜話「ハイボールと酒場のパフェ」

10月のある日のこと、時刻は17時を回ったころだ。僕たち二人は竪町のホテルを出て、夜の繁華街の散歩を始めることにした。観光気分(観光客ごっこ)なのだが、実は夕食の店は決めていない。あんなに歩いたのに、まったくお腹が空いていないのだ。それは、お昼のアクシデントで大量の肉を食べてしまったからだ。店側の勘違いで僕の料理を間違えて、それに気づいて作り直して、結局僕は2人前ほど食べたことになる笑。

珍しく木倉町を歩いてみることにした。なじみにしていた店も残っているが、まぁ新しい店が多くなった。外れの方まで歩いたら、あの「やきとり横丁」のテント看板を見つけた。古くて色褪せてはいるが看板だけは健在だ。でもまだ「みきやん」の文字が残っている笑。まだこんな時間だから電気が点いていないのだが、何となく、時間が止まったままで、不思議な気もする。
のぞいた菊一は、もちろん満席だった。高砂も同じだ。やっぱりなぁと、金沢おでんは早々にあきらめた。まだ18時まえだが、なじみのBAR「R」へ向かった。BARは酒を飲む場所だから、若者たちにとっては遅い時間に行くのが常識なのだろうが、BARづかいの上手な大人にとっては「夕暮れ時のBRA」で先に一杯だけひっかけて、その足で繁華街へ向かうものなのだ。まぁ今では、そんなことは何の自慢にもなりはしない。
めったにやらないことだが、今夜は「夕暮れの一杯」とか「BARのはしご」でもやってみようと思いついた。

表の看板はちゃんと灯っていた。誰もいない店内、誰も座っていないカウンターの中央で、蝶ネクタイの彼(マスター)がひとり、急にやってきた僕たちを笑顔で迎えてくれた。年齢は僕の10歳上だが姿勢も良くて所作がきれいだ。そしてこんな僕の「酒との付き合い方」の師匠でもある。
最初はコトバ少なめに静かな時間が流れる、儀式のように作ってくれるジントニックは、今日は格段に旨く感じて、ふぅ~と息を吐いていた。そして2杯目を飲む頃には、会話も楽しくなっていく。彼との話はとても面白いのだが、ここに書くことは控えたい。ファンにとっては、彼の話はそのまま「店の看板商品」でもあるからだ笑。まぁ普通の人からすれば、面倒くさい話に思えるだけかもしれないけどね。
ただちょっとだけ披露できるとすれば、たとえば「本物のハイボール」の話だ。まぁ言葉より先に本物のそれがカウンターに出され、ひとくち飲んだ後に、話が始まる。こいつが凄い一杯だった。でも今はそんなやつを注文する昔気質な客はいないのかもしれない。先輩たちの時代のBARは、ハイボールですら日本の文化だったのだ。まぁそんな話を知りたい人は、どうぞ店へ。
(ちなみに下の写真は2軒目のもので、前述のそれとは違います)

何杯か飲んで、そうそうに切り上げ、2軒目に向かった。彼のお弟子さん?にあたるBARマンの店だ。師匠の店で働く彼に出会ったのは、もう30年以上も前のことだ。その後独立して、明るいキャラを生かした楽しいBARを開いた。実は弟の同級生だと知ったのは、ずいぶん後のことだ。
昔の師匠の思い出話や弟のことなんかを話すうちに、どんどん客は増えていった。さっきの師匠の1杯を思い出して、メニューにある「ちょっと贅沢なハイボール」というやつを頼んだ。ひそかに師匠のそれと比較するのはちょっと意地悪かな笑。そして、出てきたのはラガブーリンの一杯(上の写真)だった。なるほど、今どきの上手なハイボールに仕立ててあった。これはこれで美味しい。
さて、昔気質の僕にも、ささやかなBARでの流儀(のようなもの)がある。最初の1杯はジントニック、そしてそこに流れる「BARの時間」を楽しめた時だけ、最後の1杯としてマティニを飲む。今夜は、普段なら飲まないハイボールとか、なんだか調子に乗って、1軒目も2軒目もたくさん飲んでしまった。はしごBARは終了だ、と、ここのマティニで締めることにした。まぁ楽しかったのだ。出てきた彼のマティニは、師匠のそれに似ていて、ちょっと嬉しかった。

ちなみに、この店には「酒場のパフェ」がある。バーテンダーが考えた遊び心のある「締めパフェ」というやつかな。こっちは家内の締めの一品だった笑。写真で見ると、なんだ果物か、などと見えるのだが、ちょっとした工夫があってなかなか旨い。まぁ人気があるようで、他の女性客も注文していた。
BARにいる間は何ともないのだが、店を出たとたんに酔いが回る感じだった。でも今夜は遠い自宅に帰る必要はない。ホテルまで5分とかからない。こんな僕たちの小さな旅にはとても便利なホテルなのかもしれない。
さて翌朝、このホテルで出された朝食は、なぜか優しい「リゾット」だった。若い女性向けだなぁ、と思っていたが、二日酔いの僕の胃袋にとっては、とても嬉しい朝ごはんになった。まぁたまたまのめぐり合わせなのだが、こんな旅が今は楽しい。

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