にわかファンのお彼岸の中日
蕎麦を食べ終わって、外へ出てきた。逆転サヨナラみたいよ、助手席の家内は嬉しそうに教えてくれた。先に車に乗り込んでテレビで結末を知ったようだ。どうやら眠っていたムネくんが目覚めたらしい。家内いわく、やればできる子、なのだそうだ笑。
実は食事の前から、スマホのWBC速報に夢中になっていた家内は、入店を待つ間も、さかんに速報原稿を読み上げて僕に知らせてくれる。それが、食事のあいだ(観れないから)気になっていたようだ。まぁハラハラしながらの劇的勝利という顛末だ。
正直なところ、自宅では野球を観ないし話題にものぼらない、そんな日常なのは間違いない。でもショウヘイくんは例外だから、きっとマスコミの影響が強いのかもしれない。とはいえWBCへの興味は薄いから、侍ジャパンと言われても、顔と名前が一致するのは2~3人しかいなかった。要するによくある「にわかファン」に過ぎないのだ。
そんな僕が、この話題に乗り始めたのは、たしか韓国戦のときだったと思う。その晩、K-Dreamの5人の顔を見に行った。練習が終わった深夜の雑談のとき、彼らはスマホを開いて、試合の経過を確認しあっていた。K-DreamとWBCの取り合わせは意外な気もした。みんなの興味がそんなところに向いている。
つられて僕も「WBCテキスト速報」を初めて開いた。試合の経過が、ほぼリアルタイムで、けっこう詳しく書いてある。感心して見入っていた。僕は話題についていくのがやっとなのだが、それが、にわかファンの始まりだった。
家内は家内で、特番の録画をしていた。勝った時だけ見るという、にわかファン特有の使い方なんだけどね笑。
さて、この日は春分の日、いわゆるお彼岸の中日(ちゅうにち)だからと墓参りに出かけた。帰り道にある、あの蕎麦屋に寄って、あの天ぷらをたべる予定だ。ここの天ぷらはサクサク感が独特で、大好きなタイプだからだ。春の山菜も入っていればラッキーかな。
着いたのは開店時刻の30分ほど前だった。まぁ繁盛店なので、早くいかないと延々と待たされることになる。名前を書いて、庭のベンチで待つことにした。店主の美意識は、こんな「あずまや」にも行き届いていて、春の草花が配置されている。もちろん店内のしつらいも春めいていた。
家内によるWBC速報を聴きながら、僕は僕でスマホで遊んでいた。そもそもお彼岸の中日って何だっけ?とか、春分の日って、そもそも何の祝日なのかな?とか、調べたりして時間をつぶす笑。「春に咲く花」と検索するのは、もはや毎年の恒例で、画像を見ながら「そうだそうだ」と思い出すのだが、記憶に残ることはない笑。この時期の僕は、春の花の「にわかファン」になるだけなのだ。
ちなみに祝日には法律(祝日法?)があって、そこに趣旨が述べられているらしい。春分の日は「自然をたたえ生き物をいつくしむ日」なのだそうだ。まぁ今日の僕にはピッタリかもしれない。とはいえ「つばき」と「さざんか」の花の区別はつかないし「桃」と「梅」も分からない笑。一方の秋分の日は「先祖を憂い亡くなった人を偲ぶ日」らしい。お彼岸の中日だから風習は春も秋も同じなのだろうが、祝日の定義の方は違うみたいだ。まぁ「ぼたもち」と「おはぎ」の違いみたいなことかな笑。
にわかファンでも劇的勝利は嬉しい。蕎麦も天ぷらも旨かったから気分もいい。天気もいいから、これから少し遠回りをして帰るつもりだ。小さな春の景色でも探そう、そう思いながら車の進路を左に切って野田山に向かうことにした。
別所から北陸学院へ、そして前田家墓地を右に見て、大乗寺公園へと進んだ。この公園はときどき来ているが、こんな山の上の駐車場から入ることはない。初めてだった。モクレンや早咲きの枝垂れ桜?、小さな黄色い花が密集してるやつ、さっきの図鑑にあった気もするが、名前は分からない。咲いてる花を見つけても、隣の家内に尋ねるのが関の山だった。
そんなとき、公園の「梅園」の一角に珍しい梅を見つけた。1本の木に紅梅と白梅の両方の花が咲いている。そんな不思議な梅の木が何本もあるのだ。どうやら紅白は枝ごとに分かれている。つまり紅梅の枝と白梅の枝があるのだ。しかも、そのバランスが五分五分なのも不思議な気がした。これは梅の「源平咲き」というらしい、面白いなぁ。
咲き方のメカニズムは分からないが、白梅が密集しているあたりをよく見ると、ほのかなピンクの花弁も混ざっているから、時間とともに移ろうのかもしれない。春の花の「にわかファン」は、やっぱり無力だが、無邪気な想像力は残っている笑。
さっそく公式LINEに上げることにした。まぁよく知っている人には常識なのかもしれないなぁ。僕は意図的に、毎年の同じ場所の同じ景色を撮ってアップするようにしている。だからまた来年も同じ日に撮るに違いない。
さて、この原稿を書いている日は決勝戦だった。最短決戦の結果、侍ジャパンは優勝を果たした。マスコミは超盛り上がっている笑。とはいえ、公式サイトの原稿としてみんなが目にするのは、1~2週あとのことになる。そのころになると、もはやマスコミの熱量はガクンと落ちているから、みんな「ずいぶん古いハナシ」に思えるのかもしれない。それが「にわかファン」ばっかり、ってことなんだと思う笑。
おなじ「にわかファン」だが、僕にとっての春の花は、もう少し続くことになるはずだ。もうすぐ桜が満開になるのだが、そのあとにも色んな花が近所で観られるはずだ。大乗寺公園のあじさいも見に行くと思う。そういえば、去年見つけたキリシマツツジ?、見ごろはいつ頃だったっけなぁ。