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2023年12月08日

変な男だけど会ってみる?

ペアリング談議
さすがに、こんな僕だって、年齢のことを自覚している。だから食べる量にも酒の量にも気を使う。若い頃のような胃袋の強さや、魔法の肝臓は、とおの昔に無くしてしまった。
でも単純に、量を減らすだけでは楽しくはない。いつしか、食べ物なら、その1品を思い切って半分以下の量にして、別のやつを新しく1品加えるような、そんな楽しみ方をするようになった。すると、だんだん上手になって、ひとつひとつは小さくして、品数を増やすような食べ方になっていった。
これは、お酒もおんなじで、少しずつアレコレ組み合わせるようになった。だから、食事が以前よりはるかに楽しくなった。外食のときも、家族や仲間たちと行くと、わざと違う料理、違うコースを注文して、少量ずつシェアすることにしている。もちろんお酒も、少しずつ違うやつを試したりする笑。

ここ数年のこと、そんな風潮は、売る側つまりレストラン業界でも進んでいった。レストランのコース仕立ても同様に、いまでは10皿くらいの料理にデザート3皿など、少しずつ提供するようなスタイルが多くなっている。前菜だけでも何品もあって、順に出てくるのが、とても楽しい。
業界紙の料理写真の場合は、料理の一皿ごとに、合わせるワインや日本酒の写真も一緒に提案するようになった。いわゆる「ペアリング」の提案だ。もはやボトルや徳利で売る時代ではなくなったのだ。
それはフルコース主体の店の場合も同じだ。出てくる料理に合わせて、好きな酒を少量づつ何種類も楽しめる方が楽しいに決まってる。だから店側も、コース料理と一緒に「お酒のコース」を提案し販売するスタイルが増えてきた。いわゆるドリンクの「ペアリングコース」というやつだ。
コースに出てくる料理との組み合わせを楽しむ提案だから、ワインなら5グラスを組み合わるような感じだ。たとえば、泡、白、赤、赤、ドルチェ、みたいな順で少しずつ出るようなものになる。これは、とても楽しい。もちろん和食なら、地酒が組み込まれるし、ノンアルだけの提案をするレストランもある。

そう言えば、いつだったかの仲間たちとの再会のときにワイン談議になったことがある。そのときも「ペアリングって何?」「マリアージュとどう違うの?」などという話題になっていった。個人的には、ペアリングとマリアージュの違いについては、難しく考える必要はないと思っている。まぁ、普通に食事を楽しむ時には、言い方の違いだけだと、思っていい。
広義で言えば様々に表現されるが、狭義で言えば、料理とお酒を組み合わせるだけだ。ペアリングは「組み合わせを楽しむだけ」なので、算式でいえば「1+1=2」と単純だ。マリアージュは、比較するなら「1+1=2+アルファ」となるんだけど、僕たちのような一般人には知識的に無理があるから、プロのソムリエに任せればいいだけだと思う笑。その「+アルファ」が彼らの腕の見せ所だ。

しばしばマリアージュは人間界の「結婚」に例えられる。やっぱり結婚は神聖で特別なことだ。そういう点で言えば、ペアリングは交際とか友人みたいなことかな。相性が良くても悪くても、面白がれば何かと楽しめる、そんなことだ笑。まぁ結婚に比べたら、友人関係の方が気楽、ということかな。
レストランで、この料理にはこれが合いますよ、などと軽く言うのは、ほとんどペアリングのことだ。思い切ってこれを合わせると「面白い」ですよ、などと聞いたらそれは「普通なら組み合わせないけどね」と言っている。つまり「変な男だけど会ってみる?」みたいな感じかな笑。
生牡蠣とシャブリ、テビチと泡盛、焼き立てのソーセージには冷えたビール、まぁどれも昔からの組み合わせだと思う。チーズケーキと赤ワイン、オールドファッションとホットミルク、金沢おでんにはコップ酒、まぁこうなると僕の個人的な見解かな笑。
でも食べ物と違って、人間世界はもっともっと複雑だ。誰と一緒なのかとか、いつどんな場所でとか、何のために、で全然違ってくる。やっぱり人間の方が複雑で大変で、そのぶん組み合わせるのが面白いんだと思う。

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