秋の夜長の濃厚な水炊き
割烹着の可愛い大学生
ひがし茶屋街の入り口に「水炊き」の店を見つけて食べてみたくなった。かつて酒屋さんだった建物(古い町家造りなのかな)を上手にリフォームしたらしい。昔ながらの風情が残った2階屋の外観の軒下に大きなちょうちんがぶら下がっている。
とてもフレンドリーに迎えられ、1階のカウンター席へ案内された。そこは広いオープンキッチンの真ん前で、職人姿のスタッフ達が活気よく働いていた。こう見ると焼鳥屋さんみたいな感じだ。

意外だったのは、カウンター席に座っているのは欧米人ばかりだったことだ。左の壁際には大柄のミドルカップル、右ではモデルさんみたいな北欧系の美女が1人でやきとりを食べていた。遅れて横に座ったのも欧米の人たちだ。
この席からは入り口が見えるのだが、店頭にやたらと人が群がっている。外の短冊メニューを見たり店内を覗き込んでいる。すべて欧米の方たちだから、金沢観光の夜の食事会場を、あれこれ物色している最中なんだと思う。興味があるのは水炊きではなく、やきとりに違いない。
店長みたいな男性スタッフが店頭に出ると、あれこれ質問攻めにあってしまう感じかな。金沢駅前でもよく見かける光景なのだが、唯一の違いは、そこに日本人の客がいないことだ。外国人の方が茶屋街の風情に惹かれるのかもしれない。
とはいえそれは開店直後の光景で、その後だんだん日本人客でテーブルが埋まっていった。日本人は予約が当たり前だから、まぁこれも観光地っぽいってことだ。

カウンターの接客を担当していたのは、割烹着姿の若い女性だった。学生アルバイトかな。この店はQRコードでスマホ注文する仕組みなのだが、外国人だけは対面で注文を取っているようだ。彼女の、英単語を並べるだけの明るい接客で、彼らもすぐに笑顔になる。
どこでもそうだが外国の方々は、僕たち日本人の食べ方を観察する。は~、あんな感じで食べるのか~、と学習するのだ。日本人だって異国の知らない料理を前にすれば、かならずそうする笑。
1本ずつ順に出てくる焼きとり5種盛りをテンポよく食べながら、僕たち老夫婦は、そんな不思議な時間を楽しんでいた。
そうこうしているうちに、水炊きのセッティングが始まった。カウンターの天板を外すとIHコンロになっていて、そこに鍋とか具材一式が入った重箱がセットされた。どうやら店のスタッフが作ってくれるスタイルらしい。
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真っ白な塊だった鶏のスープが溶け出して香りがたち、湧いてきたタイミングで、まず竹筒に入った鶏つみれを一口サイズに分けながら鍋に放り込む。そして具材の説明をしながら、テキパキと順に鍋に投入していく。
この店の水炊きは、一般的なそれと違って内臓肉(鶏もつ)も使うスタイルだった。ちょっと面白い。煮あがりのタイミングは彼らが教えてくれるから、僕たちはただじ~っと見つめるだけだ笑。
もういいかな、というタイミングで、実は最後に「胸肉」を入れる。この部位だけは軽く火を入れて食べる方が美味しいからだった。とまぁ「待て」といわれたワンちゃんのように、はいどうぞ、の声を待っていた笑。
焚きあがった水炊きはずいぶん濃厚なスープのやつだったが、想像より旨かった。心のどこかで本場博多の水炊きと比べていたのだが、もちろんタイプは違う(東京っぽい)。でもこれはこれで美味しいから、ついついワインがすすんでしまった。
▼面白い水炊きのアルバム(タップして右へ)
肉を食べ終えるころ、こんどは野菜の投入になる。そして締めの雑炊へと進む。あの割烹着の彼女が作るのだが、ちょっと手元は落ち着かない笑(まだ不慣れなのかな)。とはいえ彼女の会話は上手で、世間話に花が咲いた。
彼女は愛知県からきたばかりの金大生(1年生)だった。あっちの赤味噌が売ってなくて困ってるらしい。名古屋は雪が少ないから、角間キャンパスの冬を心配する僕たちジジババだったが、実はスキーが好きだから雪は大丈夫らしい。
アルバイトさんを孫みたいに心配するのもおかしな話だが、これも居酒屋の平和な日常のような気もする。とりあえず、この晩は楽しい食事になった。ごちそうさまでした。

ちなみに、ここの「白レバー」は低温調理で絶妙に火を入れたやつで、とても美味しかった。やきとりに特徴はないのだが、こんなタイプの居酒屋はけっこう好きな感じかな。機会があればまた使うと思う。
さて帰ろう。ひがし茶屋街にさっきまでの喧騒はまったく無くなって、いつもの暗くて静かな街に戻っていた。夜も更けたと思ったが、この段階の時刻はまだ19時くらいだった。秋の夜は長いのだ笑。









