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2025年10月31日

本の時間「とてもディープなサムライゲーム」

ハナシは少し飛ぶのだが、NHKに「明鏡止水」というタイトルの(不定期の)番組があった。武術をテーマにしたマニアックな番組で、その視点や内容はとてもディープだった。ちなみに武道ではなく武術だ。
切り口は毎回違うのだが、扱うのは日本の古武術、俗にいう武芸十八般(弓術・槍術・剣術・抜刀術・薙刀・・・)のそれだ。

一般的に知られていない武術の伝承者や達人たちが登場して、その流派の奥義や秘伝を紹介する番組ということかな。解説するのは俳優の岡〇准一くんで、番組では彼のことを「武術翻訳家」と呼称していた笑。
格闘家としても知られる彼の解説は、そもそも古武術は身体の使い方が違うとか、丹田(たんでん)とか急所とか、なかなか奥が深い。僕にとっては面白くて、ついついハマってしまった番組だった。
武術と武道は似ているようで違う概念なのだそうだ。武術は「戦うための技術」のこと、武道は戦う技術の向上を通して「人間的な成長を目指す運動文化」らしい。
現代的な武道とは違って、武術は「命のやり取り」の時代のものということかな。分かりやすい例でいえば、剣道と剣術が思い浮かぶ。

さて、読んだ小説のハナシだ。
それは時代小説の人気作家・今〇省吾さんの話題作(4部作)で、この8月に最後の完結編が出たばかりだ。読み始めたきっかけは前述の岡〇准一くんだ。どうやら彼の主演で某ストリーミングメディアでの映像化が決まったらしい。
すでにサムライの世は終わってしまったはずの明治11年、大金を得る機会を与えるとの怪文書により、腕に覚えがある志士たち292人が深夜の京都・天龍寺に集まった。
各自に配られた木札を奪い合い、東海道を巡って東京に辿り着いたものに賞金が与えられるゲームの始まりだった。キャッチフレーズで言えばサムライバトルロワイヤルってことらしい。たしかにそんな命のやり取りの旅の話だ。

彼の作品は展開がスピーディーで読みやすい。どの作品も史実をちゃんと押さえながら、一級のエンターテイメントに仕上げていく。だからいつも一気読みしてしまう。
僕が本作を読み始めたのは1月のことだが、すぐに3冊を読み終えてしまい、早く続きを読ませてくれ~、という感じで完結編を待っていた。たぶん読者はみんな同じだったと思う。
ドラマ化の最中だから内容を書くわけにはいかないが、エンターテイメントではあっても、明治という大転換の時代に生きた人々の複雑な心理や人間模様がとても深く表現されている気がする。

ちなみに、完結篇には作者からのメッセージが書かれた「特製しおり」が挟んであった(上の写真)。なるほど「旅の果て」かぁ、僕もそうだが読者たちもこのコトバに反応して、きっと、うなづきながらラストのシーンを思い出すのだと思う。
さて、ストリーミングメディアの方は11月スタートらしい。きっと岡〇くんにしかできない殺陣(たて)があるのだろうなぁ。少し見てみたい気もするが、やっぱり小説の世界のまま記憶に残す方がいいかな笑。

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