本の時間「グアムの5番アイアン」
ある日から「グアムの探偵」を読み始めた。1章ごとに完結する気軽な一冊だ。作者は「探偵の探偵」のM岡圭祐なので「の探偵」部分に期待して読み始めたのだが、主人公はクールな女性ではなく、親子孫の男三人の家族探偵だった(笑)。前書き部分に、スマ・リサーチ代表の須磨康臣からのメッセージのような部分があり、シリーズとの接点があるような、ワクワクするスタートになっている。読んでいるうちに、グアムの観光スポットや日常風景が見事に描写されていて、街の色彩や匂いまで感じられる気がしてきた。ホテルやアメリカ軍の話などが出てきて、自分の遠い記憶と重なり、とても面白かった。グアムは何度か訪れたから、個人的な色んな思い出がよみがえった。
僕のゴルフのデビューはネイビー(アメリカ海軍)のゴルフ場だった(笑)。記憶も消えかけた昔々の話だ。フライトの直前に、上司(後のゴルフの師匠)から指示されるまま、ゴルフシューズだけを買い、飛行機に乗ってグアムへと向かった。そんな調子だから、練習などしたことはなかった。というより練習場の使い方もわからない状態で、クラブの正しい握り方もあいまいな頃だった。マナーも知らないままの失礼な初心者だった。そのゴルフ場はアメリカ軍のものなので、日本人観光客は来ないし、平日はヒマだから、練習しながらラウンドすればいいんだ、と聞かされて、妙に納得していた。
師匠は「5番アイアンだけで回れ」と言い、言われるまま5番アイアン1本だけ持って、ゴルフのデビュー戦が始まった。ここのスタイルは電動カートでフェアウエイを縦横無尽に移動するのだが、僕はカートに乗れないまま、ラフからラフへとダッシュを繰り返していた。握った5番アイアンから放たれたボールはダフるばかりで進まない、たまに飛んでも、右や左のブッシュに打ち込むだけ、何度も空振りを繰り返す、ひどいプレイだ。カートに乗れないのも無理はない。「走れー」と言われ続けた、地獄の特訓のようなラウンドだった。遅いプレイヤーのパーティーは、後ろの組に迷惑をかけるのだが、さすがアメリカ軍、大きな掛け声とともに、後ろからどんどんボールを打ってくる(笑)。猛スピードで歩き、笑顔で僕を追い抜く彼らは、筋肉質の細マッチョばかりで、ネイビーの隊員はアスリートなんだと実感していた。
ネイビー所有のゴルフ場は、現在も一般客が入れるのだろうか。当時はまだゴルフ場も少なかったんだと思う。今から思えば、そんな無茶苦茶なことが許される、いい時代だったのだろう。こんなマナーの悪いプレイヤーは日本のゴルフ場にはいないが、ゴルフを楽しむスタイルは、それぞれの国によって違うのだろう。一冊の本が、遠い昔の自分を思い出させてくれた。