ピエンローの豚しゃぶ
ある日のこと、帰り道にあるKジマート(スーパー)に立ち寄った。ここはフツーのスーパーと品揃えが少し違っていて、僕のお気に入りの商品がいくつかある。ついに念願の月寒ドーナツを見つけて(しばらく売られてなかった)、嬉しくて思わず買ったこの日、野菜売り場には、立派な「白菜」が積まれていた。半割などの横には、大きな白菜2個を縛ったまま売っている。その立派で旨そうな白菜を見ていて、急に、ある「鍋」のことを思い出し、思わず食べたくなってしまった。
食べたくなった鍋の名前は「ピエンロー」という。結論からすると、白菜が主役の鍋、つまり貧乏そうな、誰でも作れそうな鍋だ(笑)。だから鍋の専門店や料理屋さんでは、おそらく出てこない。まぁ僕にとっては男の料理で、遊びみたいなものかな。初めてこの鍋を知ったのは、20年以上前のことで、雑誌dancyuに掲載されていた時のことだ。作家のS尾河童さんが中国取材で見つけてきた鍋として紹介されていた(と思う)。
ちなみにWebで検索してみると、16万くらいヒットするから、一部ではそれなりに有名な鍋で、レシピサイトにはたくさんの料理自慢たちの(ピエンローの)マイレシピが紹介されている。Webのレシピサイトは、簡単で手軽に作る時短料理のようなやつが多いのだが、僕の場合は「S尾河童のピエンロー」のレシピ、というか、彼の作り方、食べ方の信奉者なので、多少の面倒くささが必要だ。
たとえば、干しシイタケはひと晩水につけて戻すとか、白菜がクタクタになるまで、とにかく40分は煮るとか、信じられないくらいの量の胡麻油を使ったり、取り茶碗に「塩」と「七味」をたっぷり入れて食べるとか、スープはなるべく飲まないでとっておけ、というような「ルール」がうるさく付いてくる(笑)。まさに男(うるさいオヤジ)の料理だな。ピエンローの検索のときに、dancyuを追加すると、彼のレシピや記事が出てくるから、ぜひ見てほしい。
実は、出来上がった鍋を見ると、全然うまそうな顔をしていない(笑)。クタクタで色を失った白菜、旨味が溶け出して小さくて硬くなった豚バラと鶏モモ、そして旨いスープを吸い込んだ春雨が、ベタ~っと並んでいるだけだ。色彩感覚も最低だな。でもそれを、大きな茶碗に取り出して、ワシワシ、フーフーしながらパクつくと、魅惑の世界へ連れて行ってくれるはずだ。そういえば塩は多めに使うから、どんどん喉が渇く。だから酒が旨くなる、と河童さんが言っている(笑)。僕の場合は、こっそり豚バラを多めに用意しておいて、途中で豚しゃぶを楽しむ。しかもルール破りのポン酢で食べる。僕はこれをピエンローの「箸休め」と呼んでいる。
思い出してしまった僕は、今晩ふたたび、元祖・河童流ピエンローを作ることにした。材料を集め、シイタケを戻すことから始める。適当に切った具を放り込み、たっぷり胡麻油を回して、延々と火にかけて、ようやく鍋蓋を開ける。そして最後にまた胡麻油をひと回しする。出来上がりは、やっぱり汚い鍋だなぁ(笑)。
そういえば、部屋中にシイタケと胡麻油の臭いが蔓延するんだった。換気で窓を開けて夜風を入れるしかない(悲)。そして、まずは河童流の食べ方をする。取り茶碗にたっぷりの塩と七味だ。う~ん、でもやっぱり、今回も、決して旨い、と唸るほどにはならない(笑)。自己責任で料理人が残りを食べるしかないかなぁ。だから、やっぱり今夜もおろしポン酢を用意する(笑)。
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こんなピエンローを、ドライブ企画の夜の2次会で、僕が作って、またみんなに食べさせようと考えてみたりする。同じくらい貧乏そうなメニューだけど、漬け物ステーキよりはマシだろう(笑)。でも河童流の食べ方は・・・・どうかな。