ただ食べたくて「新宿のビルの階段で1時間ほど」
地下鉄から地上に出ると、目の前に「新宿アルタ」があった。ずいぶん昔、誰かとアルタ前で待ち合わせしたよなぁと、おぼろげな記憶が浮かんだのだが、こんな歳だからか、相手が誰だったか急には思い出せないものだ笑。
少し間があって、それは東京に住み始めたころの娘だと思い出した。忘れたままだと娘に叱られる汗。笑っていいともで有名だったから、ここにしたのかもしれない。まぁ当時の新宿アルアルかな笑。
自分の学生時代の頃でいえば、新宿での待ち合わせといえば、この先の紀伊国屋だったはずだ。もちろん携帯電話など無い頃だから、待ち合わせ場所が大事だった。
そういえば大学1年生の頃、夜の紀伊国屋の前で、覚えたての煙草を何本もふかしながら、待っていた記憶がある。たぶん待ち人は今の悪友たちの誰かだと思う。僕にとっては、それが新宿という街での最初の記憶だ。その後の新宿は、シゴトの関係で昼も夜もずいぶん世話になった街なのだが、もう3~4年はご無沙汰している。
今日の目的地は、すぐ近くの新宿高野ビル、つまりタカノフルーツパーラーで「あのパフェ」を食べるつもりだ。たしか1階はグッチだったと思うのだが、そんな派手な店はなくなっていて、ビルの看板で確認するしかなかった。
フルーパーラーはビルの5階にあった。でもなぜかエレベーターは地下1階にあって、僕たちは地下の売り場へ降り、ようやく5階に上がった。エレベーターを降りると、レジまでの通路に10人ほどの列が付いていた。最後尾あたりには女性スタッフが立っていて、待ち時間の目安を教えてくれる。40分くらいだと云うので、待つことにした。さすがに若い女性客が多いのだが、男性もチラホラ混ざってる。シニアのマダムが多いのも特徴なんだと思う。
待つよ、と答えた僕たちに「ではこちらへ」と女性スタッフが手を横に示して、別の方向へ誘導してくれる。ん?、と思いながら進むと、そこはなんと「階段」だ。まぁ屋内の非常階段みたいな感じかなぁ笑。階段の踊り場から見ると、すでに下の階までたくさんの人が並んでいて驚いた。
だから5階から階段を降りていった。ちょうど3階の踊り場あたりが最後尾、つまり僕たちのスタート地点はここだ笑。なるほど、さっきのレジ前の10人くらいが最前列ということだ。これは40分以上かかりそうだ。もう笑うしかない。
せっかちだった若いころとは違って、最近の僕は行列を嫌がらず、けっこう「待つ」ようになった。とはいえ今日のやつは最悪だ。階段にはもちろん冷房はないし風もない。もちろん立ったままだし景色もない。なにかと暑苦しいから、ちょっと辛い笑。もうやめて帰ろうか、と思うと、なぜか数メートルぐっと進むので、少し気が晴れる。
結局、そんな「せっかちな僕にとっては地獄のような時間」は、なんと1時間ほどかかった。おそらく日本一有名な老舗フルーツ店のパーラーで食べるには「ド根性」がいるのだ笑。そしてようやくお目当てのフルーツパフェに会えた。
「白」が基調の店内は清潔感にあふれていて、5階から新宿の街並みを見下ろす景色も素敵な場所だ。周囲の利用客は、あんな地獄の時間を忘れたように、笑顔で談笑している。
今の季節のおすすめは「桃」らしい。二人で注文したのは「岡山県産の桃のパフェ」と「タカノセレクションパフェ」というやつだ。セレクションはいわゆる定番の人気商品で、タカノの代名詞マスクメロンと何種類かの果物が乗っている。
フルーツパフェのメインは果物だ、と思われているが、実は「果物の下のやつ」がとても大事だ。パフェというデザートの語源は「パーフェクト」だ、という説があるほどで、つまり果物の品質だけでなく「全体のバランス」が、その「命」らしい。
地元の果物店とかでも華やかなやつを食べることができるが、パフェとしての完成度は違うようだ。やっぱりここのやつは格段に美味しい。シリアルやスポンジなどの安っぽい変化球は使わない。果実感あふれるジュレやソルベ、複数の果実アイスクリーム、たぶん香りのリキュールやヨーグルトも使っている。すげえ出来だ。
フルーツが抜群に旨いのは言うまでもないが、食べ進めていくと、いろいろな味や香りに出会うので、とにかく楽しい。いろんな素材やフレーバーが奏でるハーモニーってことかな笑。
食後は下のフロアで、手土産を買うことにした。約束の予定時刻に遅刻するお詫びもあるから、奮発することにした。パフェを食べるだけなのに、こんなに時間がかかるとは思わなかったからね笑。
フルーツの専門店だから、果物も加工品もたくさんある。もちろんタルトもカットケーキも、お祝い用のホールケーキ専門のショーケースもある。果物を使ったベーカリー(パンや焼き菓子)、そしてデリ(フルーツを使った総菜)も扱っていた。まぁ見てるだけでも、どれも美しくて楽しい。
手土産をもらう方もきっとそうだが、買う側(贈る側)が楽しくなる場所だ。フルーツはやっぱり「季節感」とか「贅沢感」の代表なんだと思う。