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2021年04月16日

大は小を兼ねない

けっして、おなかが減っている訳ではないのだが、メニューの写真を見ていると、どれも旨そうに見える。根っからの食いしん坊だから、食い意地だけは誰にも負けない。そそるメニューのこの店は、昭和の臭いが残る郊外型カフェのチェーン店「K」だ。
サンドイッチは何種類かあるが、ハムサンドとかミックスサンドとか、どれも定番の喫茶店タイプのやつで、そのトーストサンドも選べる。まぁ僕のような年齢のものには、懐かしい感じがする。ハンバーガーと、この店が呼んでいる商品グループは、中にキャベツの千切りなどが入っていて、僕からすると、丸いサンドイッチに過ぎず、とてもハンバーガーとは呼びたくない。カツサンドやエビカツサンドもあるが、それに使われるパンは、なぜか、四角いコッペパンみたいなやつだ。名古屋式なのだろうか。そう言えば、味噌カツサンドもあった気がする。
でも結局、注文することはない。なぜなら、ここの商品は、どれも「どでかい」サイズだからだ(笑)。サンドイッチは、具材の玉子ミックスやポテトサラダが「これでもか」と大量に入っているし、ハンバーガーなどに使われるパンは、信じられないサイズの巨大なやつが出てくる。サイズが大きすぎて、僕のようなな食いしん坊でも、半分くらいでおなか一杯になる。何度か、そんな失敗をしたから、もうこりごりだ。大きければいい、なんてことはない。もう、意地で食べる歳じゃないんだ。

僕の第2次成長期?は、周りの男子より遅かったようだ。中学校に入学したころは背が低くて、前から数えて2~3番目だったと思う。たしか150㎝そこそこだった気もする。それは思春期の始まりでもあるから、少しコンプレックスを持った可能性がある。でも、世の中の母親が考えるのは我が家も同じで、どうせ背が伸びるのだからと、ブカブカの制服を与えられた。「大は小を兼ねる」という母親の常套句が、ここでも繰り返された。ブカブカの制服を着る側の身になってほしいが、そんな反抗期は、もう少し後のことだ。
遅かった成長期がその後、僕にもやってきた。たしか高校入学時の身長は170cm位だったと思う。入学のときには反抗期に入っていた僕は、もう伸びないだろう、という根拠のない理由をつけて、標準的な制服(学ラン)を選んだと思う。もうブカブカが嫌だったからだ。しかし、その後の1年間で、僕の身長はさらに何㎝か伸びたから、けっこうチンチクリンな制服のまま、高校生活を過ごすことになる(笑)。もう少し伸びていれば、まんまと新品の制服を買えたかもしれないが、伸びは中途半端な位置で止まってしまった(笑)。
時は流れ、社会人になると、結婚すれば太るはずだ、と言われ、めったに着ない「礼服」は、ゆったりサイズで、ズボンのウエストにアジャスター機能が付いたやつを買うことになる。ここでも「大は小を兼ねる」という金言に、僕は負けてしまうのだった。もったいない、とか、大は小を兼ねる、という魔法の言葉で、ダブダブのサイズと戦った記憶は、僕たちの世代に多いのかもしれない。

こんな年になると、大が小を兼ねる、などということに意味はなくなってしまった。新しく買うなら、車は小さい方がいいなぁとか、もう一度、家を建てるなら、適度にコンパクトな方に憧れる。外食では、もうコースは食べれないし、立派なメインをひと皿食べるより、少しづつ3品の方がいい。
最近のコンビニは、よく出来ていて、サイズの小さなスープやサラダ、和え物やつまみなどが揃っている。たしかにこれなら、従来のサイズと違って、他の商品を何種類か買うことができる。サイズが小さいメニューは、「あと1品」という、ささやかな幸せにつながるのだと思う。
さて、大きい方がいいものを探してみたが見つからない。夢とか目標は大きい方がいい、などと言っていた僕なのに、と笑ってしまう。やっぱり、歳をとると、大は小を兼ねないと思うようになるのだ。

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