そうだ鯖寿司を食べに行こう(京都その1)
食いしん坊の京都散歩
先日、ひさしぶりに京都にいた。そんな秋の京都のことを書こうと思う。書くのは2編、一方は「京都の紅葉スポット編」、そしてもう1編は「食いしん坊の京都編」だ。
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並んでいるのは、高齢の人ばかりだった。この日は平日で、もう昼のピークはとっくに終わっている時刻なのに、10人くらい並んでいる。古い商店街の、その代名詞のような古い食堂(失礼)なのに、行列がついていることに、正直驚いた。
いわゆる昔からのアーケード商店街で、自転車に乗った高齢者が行きかっている。薄暗くてシャッターの店もあるから、観光地「京都」という感じはしない。古い洋品店や薬屋、元気な魚屋さんと揚げたてのコロッケを売る肉屋、そして渋い古本屋もなぜか2軒ある。いい感じだ。
そういう意味では、この食堂はとても馴染んでいる(笑)。ここは出町柳の出町桝形商店街。そしてレトロなこの食堂の名前は、満〇形屋という。あるとき同級生の某嬢に教えてもらった店だった。正しく言えば、教えてもらったのは、ここの「さば寿司」だ。
並んでいると続々と列が長くなる。割烹着に三角巾の女将さんみたいな人が外に出てきて、人数を数え始め、「今日はここで終了」と大きな声で宣言する(笑)。今日の鯖寿司はこれで売り切れらしい。つまり並んでいる人≒鯖寿司狙い、ということだ。滑り込みセーフだ。
●スライドアルバム×4枚
もちろん、この時期の京都を選んだのは、秋のSNS企画があったからだ。きれいな京都の紅葉(の写真)をみんなで共有したいと思ったのがきっかけだ。でも、京都に着いて、真っ先に向かったのは、ここだった。出町柳と言えば「出町ふたば」もある。ふたばの豆餅(豆大福)と、この「鯖寿司」の魅力が、紅葉よりはるか上位に来ていた(笑)。
三条から京阪で出町柳へ向かった。出口から下賀茂神社あたりの2本の川(高野川と賀茂川)の橋を順に渡ると、左手に長い行列が見えてくる。出町ふたばの行列だった。行列は2本の道路をまたぎ、信号の先の店の前にも、歩道の左右に長い列が続いている(笑)。この恐ろしい光景をみて戦意喪失し、豆餅は断念した(笑)。結局、選んだのは鯖寿司の方だ、こっちは断念するわけにはいかない。
待つあいだ店内をのぞいた。外から厨房の一部が見えるのだが、今そこで鯖寿司を作っている。だから時間がかかるのだ(笑)。横にはなぜか大量の松茸のカゴが見える。土が付いてるから国産みたいだ。ほぅ、松茸うどんもやってるらしい。
●スライドアルバム×5枚
1時間以上並んで、ようやく食べた「鯖寿司」は絶品だった。京都の鯖寿司といえば「いづう」が一番、と思い込んでいたから、ちょっと衝撃の味だった。まったくタイプが違うのだ。鯖もシャリも大きいのだが、口溶けがさらりとして優しい味だ。例えは難しいが、繊細で女性的かもしれない。いづうの鯖寿司は力強くて男性的、そんな気がする。
基本はうどんに鯖寿司ふた切れのセット売りなのだが、女性でも、苦も無くぺろりと食べられる。隣のおじいちゃんは、ひと皿(5~6切れ)を肴に日本酒のコップ酒を旨そうに楽しんでいた。また叱られそうだが、僕は、せっかくだからと松茸うどん(意外に安い)とのセットにした。大量の松茸の香りや味と、鯖寿司の勝負は、圧倒的な差で、鯖寿司に軍配が上がった。京都の伝統の味は、やっぱりどこまでも深いのだ。
ちなみに翌日の帰り道、京都駅の伊勢丹で「いづうの鯖寿司」と「ふたばの豆餅」のゲットに成功して列車に乗った。食べ比べもできたし、大好きな豆大福も食べれた。この点では思い残すことはない。まぁ松茸はおまけだ(笑)。
●スライドアルバム×8枚
さて、鯖寿司のハナシが長くなったが、おまけの話(食べ物ばかりだけど)をもう少し。
初日の夜に選んだのはイタリアンだった。夜の紅葉ライトアップを観たあとに、ふらりと立ち寄った気軽な店だ。高瀬川の川辺にテラス席があって、そのソファーで軽くつまんで飲んでいた。まぁ川床を模した店が多い気もする。独特の肉の串焼きが上手だったし、牡蠣やイワシのフリットも旨かった。夜の京都(しかもテラス席)は冷えていて、ワインを急いで飲み干して、酔っぱらう間もなく帰ることにした(笑)。和食もいいが、京都は、食の懐が深い街だと思う。
翌朝は三条大橋のスタバで朝めしを食べた。レトロな建物を上手に再生した店だ。そういえば、京都は喫茶店も多彩だと思う。初日で疲れたこともあって、翌日はけっこうあちこちのカフェで休憩した(笑)。
●スライドアルバム×5枚
何年かぶりに哲学の道を歩いた。紅葉狩りとしては物足りないが、人も少なくて気持ちのいい散歩になった。その途中に素敵なカフェを見つけた。横を流れる小川(琵琶湖疎水の分線)に面したオープンテラス席が、とてもいい感じだった。
地元住民のような男性の足元に、一匹のブルドッグが座っていて、隣のお姉さんたちをじ~っと見つめている(笑)。立ち上がってお姉さんたちに近づこうとするたびに、ご主人はリードを引っ張って阻止する。店にはゆったりした時間が流れていて、そんな優しい攻防が似合うような感じだった。
ブルドッグは、今度は僕たちを見つめ始めたのだが、近寄ってくることはなかった。きっと若いオスに違いない。このブルドックの顔が、しばらく脳裏から離れなくなった(笑)。僕の京都はいつもこんな感じの旅だ。