BARの夜話「天空のBAR」

そのBARは虎ノ門ヒルズにある。従来にないデザイン性の高さで有名になったホテル「Aンダーズ東京」の最上階52階だ。51階のフロント階まで専用エレベーターで上がり、わざわざフロント前を通って、52階までのエレベーターに乗り換える。

最上階の扉が開き、一歩廊下へ出ると、何もないことに一瞬驚く。照明が少なくて分かりにくいが、そこはホールのような大きな空間で、かすかな設備などから、教会らしいと気づく。BARへの案内看板などは見当たらない。ただ教会横の通路だけは見えるので、右手の方に向かって迷路を歩くように進むしかない。しばらく進むと、黒っぽい大きな壁がある。建物の外壁のように見えるが、やはり看板はない。大きなドア（のように見える壁）に近寄ると、かすかに「Rooftop-Bar」と書いてることが分かる。恐る恐る押すと、静かな音楽とともに美女アテンドが笑顔で迎えてくれる。スタッフは若く、カジュアルなスタイルだ。けっして僕が老眼だから見つけられないのではない、利用客は誰もが、こんな小さなトラップ（罠）に出会い、それを楽しむということだ。

肝心の店内はテーブルトップの小さな照明しかないため、全面ガラスの先に、東京タワーほかの東京の夜景パノラマが、大きく広がり、しかも「真下に見下ろす」ような感覚で味わうことになる。このBARは、入口が見つからず迷惑するのだが、一番の人気メニューは、この52階からの夜景なのは間違いない。