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2018年06月29日

今しか書けない「オシムの教え」

サッカー中継のテレビカメラはボールを追う。ボールを持たない選手の動きを見ることはない。それはサッカーが、ボールを奪い、運び、ゴールに入れるゲームだからだ。しかし、90分のゲームで、選手一人がボールを保持する時間は1分程度と言われている。つまり試合を左右するのは、ボールを持っていない時の一人一人の動きにかかっている、というスポーツだ。これは現実社会も同様で、組織でもチームでも、表面上の課題に見えること以外が、とても大事だということだろう。たかが同窓会の活動なのだが、われら27期のイベントも同様だと思っている。半端ない大迫のヘッドが連日報道されているが、これまでの代表戦で、彼がオトリで動いたり、DFに囲まれ蹴られ、潰されたというシーンが、実際にはたくさん存在する。カメラが撮らないだけで、大迫以外の他の選手すべてが、そう動いている。動くことで相手が動くからだ。

シャイでシニカルに話すオシム(元A代表監督のイビチャ・オシム)が好きだった。ウイットに富んだ語り口から生まれるサッカー哲学に惹かれた。今でも彼の記事は優先して読んでしまう。サッカーは90分全力で走り切るものだとシンプルに伝え、運動量が多くて守備力が高く献身的なプレーを求めた。献身的なプレーとはボール周辺とは別の、フィールド全体の些末な動きのことだ。僕の人生態度もそうありたいものだ。事前の盛り上がりに欠けた今回のワールドカップの話は、初戦のコロンビア戦に勝利した今しか書けない。勝った時しか書けない。だから編集後記の原稿を入れ替えて、これを書いている(笑)。今夜のセネガル戦のあとでは、筆が進まなくなる可能性も高いからだ。さあセネガル戦だ。明日は少々寝不足での仕事になるだろうな。

後日談
この記事を書いた日、サムライジャパンはセネガルと引き分けた。日本サッカー史上に残る「いい試合」だったと思う。本田の同点ゴールを生んだのは、ここでも潰れた岡崎のプレーだった。やはり岡崎に拍手を送りたい。さらに賛否分かれるポーランド戦を経て、日本は決勝トーナメントへ進んだ。ルカクのベルギーとの試合は深夜3時キックオフなのだが、やっぱり観ることになるのだろう。ジジイは朝に強いが夜には弱い。

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