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2021年06月18日

散歩の途中で「きみは薔薇より美しい」

昭和歌謡はどこか胡散臭い(うさんくさい)、のだそうだ。ある音楽番組で、売れっ子プロデューサーがそう言っていた。しかしこれは誉め言葉だ。独特の「歯が浮くような歌詞」が似合う、ということらしい。何となくわかる気がする。胡散臭いのが良いのだ。
ある日、きれいな薔薇を見ていて、思わず歌が浮かんだ。僕にはそんなことがよくあるのだが、一度思い出すと、その日はその曲ばっかり浮かんでしまう。今回は「きみは薔薇より美しい」が耳から離れなくなった(笑)。浮かぶのはサビの部分だけなのだが、気になって調べたら、化粧品メーカー「K」のCMに起用された、H施明の楽曲だった。どうでもいいが、彼は後に、このCMに出ていたOリビアハッセーと結婚したらしい。まぁ歌詞もゴシップも、昭和歌謡的だ。
そんな40年以上前の歌を忘れないのは、CMソングの威力ということなんだろう。ちなみにこの日は、O椋佳の「シクラメンのかほり」が続けて浮かんで、最後はこっちばかりになったんだけどね。。

5月中旬のことだ。この日、僕は髪を切っていた。店主は、中止が続く珠洲の祭りのハナシを熱っぽく語っていた。あのキリコはぜひ見てもらいたい、という。そんな会話が、どうして薔薇の話題になったのか、もはや分からないのだが、彼にこの「バラ園」を教えてもらい、帰路に立ち寄ったのだ。場所は、泉野?富樫?の総合運動公園の中だという。あの陸上競技場には思い出があるので行ってみたくなった。そんないきさつで今日の散歩はここに決まった。
驚くほど広い駐車場(暫定駐車場?)にポツンと車を停めた。隅の方に何台か停まっているのは職員用だろうか。道路を渡った向かいに、あの陸上競技場のゲートがあって、そこからトラックやスタンドが見えた。ずいぶん昔に会社の運動会とかイベントをここでやっていた。だから懐かしくて歩いて行った。あいにくゲートが閉まっているので、外周をぐるっと迂回して正面玄関に向かうことにした。
角を曲がるときになって、近くに蕎麦屋があることを思い出した。行ったことはないのだが、人気の蕎麦屋だ。散歩のあとに旨い蕎麦ってのも悪くない。しかし、延々と外周を歩いても、バラ園らしきものはない。実は同じ運動公園?だが、全然違う方向へ進んでいたのだ。まぁ散歩だから、それはそれでいい。

駐車場の反対側の、あの職員の車だとおもったあたりが公園で、その奥に色鮮やかな花々が見えた。そこがバラ園だった。さほど広くはないが、区画レイアウトがきちんとしていて、区画ごとに違う色、違う種類のバラが咲いている。僕が知っている花屋のバラとは違って、とても大きくて、鮮やかで、堂々と咲いている。だからとてもきれいだ。
それぞれ品種の表示があるのだが、どれも面白い名前だ。門外漢の僕には、どれも興味深い。フレンチレースとか、ショッキングブルーとか、形や色が似合うやつもあれば、ダイアナ・プリンセスなんとか、プリンセス・アイコ、マリアカラスみたいな高貴な名前もある。表示は、根元にあるので、バラの太い幹が見えるのだが、可憐な花とは違って、どれも無骨に太くて、鋭いトゲがナイフのようにびっしり付いている。まぁ男の僕にとってバラは女性イメージなのだが、美しさと強さの象徴なのかもしれない。

昭和歌謡的に言えば、バラは特別な花かもしれない。それを「薔薇」と漢字で書くのも、いかにも昭和歌謡だ。そんな時代に生きた僕は、花束やアレンジを頼むとき、バラが浮かんでしまうのは間違いない。まぁつまり、ベタなのだ(笑)。
どこかの開店レセプションだったか、仲間内の結婚お祝い会だったか忘れたが、友人の男性と二人で、それぞれ花束をアレンジオーダーし、持っていったことがある。相手の女性に、ふたつの花束を同時に渡す趣向なのだが、明らかに僕の花束はひどかった。まぁセンスがなかったのだ。そのとき無理にバラを使ったのが敗因らしい。
けっして昭和歌謡が似合う男になりたいわけじゃないから、薔薇を使いこなしたい訳でもない。もうそんなカッコつけるような歳じゃない。
ちなみに、その蕎麦屋は定休日?で、散歩の締めにはできなかった。バラの最盛期がいつかも知らないのだが、そんな時期にまた来ようと思う。もちろん蕎麦屋の定休日を確認してからだ。

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