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2022年08月06日

散歩の途中で「へしない旅」

金沢弁で言うところの「へしない」は「待ちきれない」という意味なのだそうだ。僕にとってはさらに「予定通りいかない」「ちょっとしんどい」という意味も加わる。そもそも、僕はせっかちなので、人一倍「へしない」ことは好きじゃぁない(笑)。
とはいえ「旅」の楽しみのひとつに、その場所に流れる時間を楽しむ、という考え方がある。旅先には独特の時間軸があって、その大らかなリズムに身を任せるほうが、その土地のテロワールを感じられるような気がする。
今回の旅の目的は「2軒の宿」での滞在だった。まったく対照的な2軒を選んだから、ゆっくり宿での時間を楽しみたい。だからそれ以外の、移動とか散歩とかはすべて「おまけ」みたいなものだ。大した計画もない。まぁ旅はやっぱり一期一会を楽しむものなのだ。さて、今回楽しむことになる「箱根時間」は、どんなものになるんだろう、久しぶりの旅だからと、ちょっとした街歩きにもワクワクしていた。

箱根登山鉄道
この日、僕たちはふもとの箱根湯本駅にいた。今から箱根登山鉄道で強羅(ごうら)へ向う。路線の名前の通り、登山電車で箱根の山登りをするつもりだ。時間もあるから途中下車して散歩するのも悪くない。
現役の頃、ある勉強会に参加していたから、箱根には毎年1~2度訪れていた。だから、この電車がゆっくり走ることや、時間がかかることを知っていた。なので箱根ではタクシーしか乗ったことがない(笑)。ということで、この日は、せっかちな僕にとっての「へしない旅」が始まったのだ。
途中で「スイッチバック」というやつが4回ほどある。電車は急な斜面は登れないから、時々止まって、進行方向を逆にスイッチして、つまり坂道をジグザグに登っていく。鉄道ファンなら、そんなことも楽しいのかもしれないが、とにかく僕には、へしない(笑)。タクシーなら20分もかからないのに倍以上の時間をかけて、ようやく強羅に着いた。途中下車どころではなかった(笑)。さらに天気も悪いから、ロープウエイは明日に持ち越すことにした。
さて、それにしても腹が減った、箱根の名物って何だったかなぁ。

強羅公園
軽く蕎麦を食べ、時間つぶしに向かった強羅公園(国の登録記念物らしい)は、駅の横の長くて急な坂道の上にあった。僕たちの脚力では坂道はゆっくりしか進めないから、やっぱりへしない。そうか、箱根は山なんだ。あちこち散歩するってのは、僕たちには苦行に等しい行為だと気づいた(笑)。
強羅公園はフランス式の庭園で長い歴史があるらしいが、現代的な施設も整備されていて、若い人たちが楽しんでいた。でもここは山の斜面を公園にしたものなので、斜面を(階段を)上るのが、これまた、へしないのだ。園内には立派な建物のカフェがあって、そこのサンドイッチはとても美味しそうだった。さっきの蕎麦は失敗だったから、運がないのだ。とはいえ、バラ園はきれいだったし、紫陽花の展示会場も素晴らしかった。さすが箱根、ということかな。
そんな初日は、明らかに移動手段を失敗したのだ。そんな反省もあって、二日目は泊まった宿からタクシーで大涌谷(おおわくだに)に向かうことにした。運転手さんによれば、時間も費用も、タクシーのほうが圧倒的に速くて安いのだそうだ。やっぱりなぁ、あっという間に着いた(笑)。

ロープウエイ
大涌谷の駐車場の正面では、大きな富士山が迎えてくれた。ややガスっているのだが、足元に雲をひきつれた姿は美しかった。運転手さんは「黒たまご」のオブジェの前で富士山の写真を撮ったらいいと教えてくれた。なるほどいい構図なのだが、ガスのせいで、あまりきれいな写真にはならなかった。
大涌谷は箱根の代名詞だ。火山性の地滑りで山が崩落して誕生した「地獄谷」と呼ばれる殺風景な大きな谷だ。火山性のガスが噴き出していて、もちろん草木は何もない。なのに人気なのは不思議な気もする。黒たまごがあるから?、いやそんなはずはない(笑)。
さて、今日はロープウエイとケーブルカーに乗ろうと決めていた。時間もあるからと、よせばいいのに、ロープウエイで芦ノ湖まで降りて、Uターンして強羅に戻ることにした。歩くのに比べれば楽に景色が楽しめるのだが、これがまた時間がかかって、へしないのだ(笑)。芦ノ湖ではエヴァンゲリオン(箱根は物語の舞台だ)に会い、大涌谷の地獄のような火口の景色を空からのぞいて、外輪山?を超え、今度はケーブルカーに乗り換えて、ようやく強羅に到着した。たしかに雄大な景色だった。秋の紅葉は絶景だろうと思う。

ちなみに、箱根のロープウエイは人気らしいが、8人乗りのやつが、2~3分間隔でどんどん続くから、待ち時間はほとんどない。なにせ観光の大動脈なのだ。そんなロープウエイだが、2019年の噴火で運航中止になり、観光に大打撃を与えたそうだ。さらに台風の土砂崩れで登山鉄道が止まり、ようやく復旧したのだが、翌年(2020年)からはコロナに見舞われたままだ。
朝のタクシーで、そんな3年間の箱根の苦しみを耳にした。観光客の僕たち夫婦にできるのは、いろんな交通機関に乗ったり、お土産を買うことくらいだ。あぁそうだ、今晩の食事のときに、ちょっと高い酒でも飲もうか。それも貢献かもしれないよね?。お土産に賛同した家内だが、どうやらお酒はだめらしい(笑)。

今回便利だったサイト「箱根ナビ」 hakonenavi.jp

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