日曜の朝のささやかな楽しみ
パンの消費量が、お米の消費量を上回ったのだそうだ。まぁ、お米の消費量の減少が止まらないということらしい。古来の日本の季節感(自然観)は「暦」に表現されていて、稲作と深い関係がある。日本の神事の大部分もそうだと思う。少し残念な気もする。
僕たちのように、欧米のライフスタイルへのあこがれが強かった世代は、若い頃、お米は古臭くて、パンの方がかっこいいと思っていたふしがある。確かにカッコつけて朝はトーストを食べてたっけ。それでも年齢とともに和食へ回帰していったのも実感している。そんな典型的な日本人の僕は、やはり今は「ごはん」党だ。とはいえ、たしかに量は減ってしまった。僕の場合は「朝食のとき」だけだ。概ね週6回、月曜日から土曜日まで、毎朝キチンと「ごはんと味噌汁」の生活だ。
年頃の娘たちの朝食風景の記憶はない。中学生や女子高生の朝はバタバタしていて、機嫌も悪そうで、父親の僕は時間差を保って近づかないようにしていた気がする(笑)。まぁ、日曜の朝だけは、彼女たちもゆっくり寝坊できたから、殺伐とした風景ばかりではなかったようにも思う。そんな4人家族の日曜日の朝のお楽しみは、わが家のサンドイッチだった。
娘たちが嫁ぎ、二人暮らしになった今でも、毎週とはいかないが、ツキイチくらいの間隔で、日曜日だけのメニューに登場する。世の中はサンドイッチのブームなので、美味しいやつは、いつでもどこでも手に入るのだが、長年食べてきたこともあって、わが家の「日曜サンド」が、一番ほっとする。特に具材に工夫があるわけではない。きゅうりやトマト、ハムとか玉子焼きとかの素朴なやつばかりだが、これがいい。カットサイズが小さくて、それを何個も食べるのが、また楽しい。
僕の好みもあって、使うのはマヨネーズだ。コーヒーに合うのは辛子バターに間違いないのだが、わが家の日曜サンドは昔からマヨネーズと決まっている。耳を切ったサンドもいいが、耳つきのままのトーストサンドも捨てがたい。
そしてもうひとつの楽しみが「コーヒー」だ。起きてくる時刻はいつもと同じだが、日曜日だけは「自分でコーヒーを淹れる」という作業が加わる。淹れるとは言っても、コーヒーメーカーに豆を入れ、水を規定量そそいで、スイッチを入れるだけだ。実は、コーヒーの「豆の匂い」が大好きなので、豆の保存容器を開けるときの香りが、なんともたまらない。そしてコポコポし始めたときの、抽出の香りが、さらに好きだ。ときどきぼーっとしながら、香りを楽しんでいる(笑)。
そして、たまにだが、抽出の途中で、わざと淹れたての濃いやつだけを抜き取って飲むことがある。これはこれで、めちゃくちゃ旨い。これを飲みながら、新聞を隅から隅まで、好きなだけ読む。特に日経の日曜日は紙面構成が違っていて面白いからだ。
書いてしまうと、小さなやつだなぁ、と思ってしまうが、日曜日の朝の楽しみなんだから仕方ない。
この日曜だけのサンドイッチが、誰かの気まぐれで、ホットドッグやロールパンになったり、娘たちが好きなホットケーキがローテーションに加わった時期もある。二人暮らしになってからは、朝マックにハマったこともあれば、ブームに乗って買ってしまった「パン焼き機」で焼いた自称スペシャルも食べたっけ。でもあのパン焼き器は、もうずいぶん見てないけど、どこへ行ったんだろう(笑)。
おっと、この話題に触れると、ネスカフェのドルチェグスト(あのカプセルのカフェラテなんかが飲めるやつ)の話題で逆襲されてしまう。こっちは僕の気まぐれで買って、すぐにお蔵入りした(笑)。
最近は近所で見つけた美味しいパン屋の総菜パンもお気に入りだ。ここのホワイトソースは抜群だし、アンパンも旨い。それから有名店の「生食パン」の厚切りトーストもときどき出てくるようになった。まぁ、パンをアレコレ楽しむのは、日曜だけのささやかな楽しみだ。
でも僕の希望としては、結局は、わが家の味に戻ってしまう。今週末は、いつもの日曜サンドをリクエストしようか。たまには「ツナ」のやつがいいかな。