とことん気になったBAR
神戸企画の情報は7回目なのだが、まぁ今回は、その「番外編」のような位置づけだ。
今回書くのは、三宮のBARのハナシだ。そんなハナシにあんまり興味のない方は飛ばしてもらって構わない。なぜなら、今から書くBRAのハナシは、ちょっとディープで、BAR好きでなければ、なんだそれ、ってことになる。僕にとっては、久々に語りたくなったBARだ。つまり面倒臭いハナシになる笑。
それは、伝説のハイボールで有名な、とあるBARのことだ。そのハイボールは、石川県民にはめったにお目にかかれない。夜のお姉様が横で作ってくれるあれではないし、今の若者たちが居酒屋でビールやレモンサワーのように飲んでいるあれでもない。今、飲めるとすれば、大阪をはじめとする一部の地域だけだ。そしてイメージで言えば、伝統ある名店で修業を重ね、客に認められた老練のバーテンダーがいて、BAR本来の美学や矜持を守る、いわば昭和の香りを残した正統派のBARだけだと思う。
そして、この伝説の(つまり本物の)ハイボールは、ここ神戸が誕生の地だ。BARの名前は「サンボア」という。
以前ここで、三宮高架下の「ニシオカ」のことを書いた。このイタリアンを探して歩いていた僕は、偶然にそのBAR「サンボア」の看板を見つけた。あのロゴだったが、店が新しかった。へえ~こんなところにもあるんだと、いったん驚いた。そして違和感を持った。サンボアのパクリ(偽物?)かもしれない、と思ったからだ。
たまたま10月頃に、夜の片町で「本物のハイボール」というやつを飲む機会があった。簡単に言えば「サンボアのスタイル」で作った「氷のないハイボール」だった。飲んだとき、その不思議な旨さに驚いた僕は、大阪の堂島や北新地のBARサンボアへ行ってみたくなった。銀座にもあるのだが、やはり本拠地は大阪だからだ。
ハナシは三宮に戻る。その夜に訪ねたジャズバー「ソネ」で、コウベハイボールというメニューを見つけ、頼んだ。出てきたのは、氷のないハイボールだった。スタッフによれば神戸独特のご当地メニューらしい。店ごとにレシピが違うらしいから、金沢のハントンライスみたいなものかな。その地味なハイボールを片手に神戸ジャズを楽しみながら、僕はふと、そのとき何かがつながって、その場でスマホを開いて「サンボア」や「コウベハイボール」のことを調べ始めた笑。
そして驚いた。BARサンボアには、なんと100年の歴史があること。その発祥は神戸だが、その店はずいぶん前に消滅してしまったこと。10年修業すると独立してサンボアを名乗れる不文律(のれん分け)が残っていて、代替わりしながら100年経った今も、サンボアの魂と美学が引き継がれている(14店)こと、そんな歴史を知った。その歴史の象徴がサンボアのハイボールだ。
一方の、コウベハイボールは、そのカタチだけが同じだ。調べると、やはりコウベハイボールはサンボアのそれが源流で、サンボア系譜の店(これも神戸にあった)が発祥の地だった。今では、店名ではなく、あくまで神戸の名物として生き続けていることになる。
もちろん、この「サンボアのハイボール」のレシピや特徴も出てきたし、コウベハイボールのそれも調べたのだが、ここでは割愛する笑。まぁ僕のことだから、家飲みのときに作るに違いない。もちろん使うウイスキーも炭酸も、サンボアのそれと同じものを揃えるし、その独特の作り方も真似してみる笑。
ジャズバーを出て、とあるBARのカウンター(全く別のBARだ、店名も非公開)に座っても、その好奇心は続いていた。だから行儀が悪いことは自覚しながらスマホを開いて調べ続けていた。そして、ある地元新聞の記事にたどり着いた。2021年のEKIZO開業のとき、現サンボアのオーナーの一人が、サンボアを再び三宮にオープンさせた、という記事だった。つまり67年間の空白を経て、サンボアが再び三宮に戻ってきた、という趣旨だった。
それが、午前中に見つけたあの看板(あの店)だったのだ。新しいはずだ。パクリではなかった笑。つまり15店目が、サンボアの聖地に誕生した(凱旋した)ことになる。店名は「神戸サンボア」、がぜん行きたくなった。
ところが僕はその晩、ずいぶん痛飲してしまった。オビオビのワインもそうだが、最後のこのBARでやられた笑。その店主は想像以上に変態バーテンダー(これは褒め言葉だ)だったのだ。まるでフルコースのように飲んだ。そこを出て、ふらふらになりながら、ようやく神戸サンボアにたどり着いたのだが、すでに店の灯は落ちていた。純白のバーコートを着たバーテンダーが、外へ出てきて、パリっと背筋を伸ばした姿勢で、最後の客を見送るところだった。断念するしかなかった。
だから、5月の神戸本番のとき、僕は密かにサンボア行きを狙っている笑。きちんと調べたら、営業時間は12時から24時、つまり昼もやっているようだ。とはいえ、神戸サンボアはスタンディングバー(立ち飲み)で、8席しかないから、誰かと語り合うような場所ではない。カウンターに立ったバーテンダーの、作る手元や所作までがその商品だ。バーテンダーも客も無口がいい笑
氷なしのハイボールは、ダラダラ飲んではいけないから、15分くらいで粋に飲んで、さっと帰るのが流儀だ。まぁ半分は僕の妄想なのだが、そんなBARだからこそ、やっぱり行ってみたいのだ。でもレシピはダブルなので、昼にはきついかもなぁ笑。
そうなのだ、言ってしまえば、たかがハイボールなのだ。でもBARフリークにとっては、飲み物のそれではなく、その物語を味わいたいのだ。だから僕も、その日はきっと姿勢よく、背筋を伸ばしてグラスを口にすると思う。もちろん会話は最小限だ。
ね、読まずに飛ばしても構わない、って書いたのは、そんなことだ。BRAについては僕も一種の変態なので、語りたくなると、やっぱり変態っぽいハナシになる。自覚はしてるんだが、どうしようもない笑。
神戸企画の概要
●タイトルは大人の修学旅行「神戸編」
●日程は、2023年5月13日(土)~14日(日)
●現地集合、現地解散、ホテルも電車も参加者個人で
●推奨ルートやおすすめスポットを多彩に提案
●それぞれ自由に楽しんで夜だけ全員集合
●夜の会場は本格中華「新愛園」16:45~
●幹事は0815金沢駅発サンダーバード12号に乗る予定(JR三ノ宮には1136着予定)、宿泊ホテルは「レムプラス神戸三宮」
●金沢組の「神戸ミーティング」は予定通り4月15日土曜日16時~。当日の電車も翌日のランチも、そろそろ予約しておかないとね笑。
●詳しい情報は(まぁ雑談も)公式サイト「食う見る遊ぶ」で継続