BARの夜話「ビーバーとヴーヴ・クリコ」
BARはカウンターに座りたい。カウンターはその店の象徴であり、店主の美学が詰まった空間だからだ。まぁ何となくだが、カウンター好みの僕は「店主の人格」みたいなもの触れて、ホッとしたいのだと思う。とはいえ、そうもいかない場合も多い。その店のファンたちは、誰もが僕と同じように考え、カウンターを望むからだ。そんなときは、隅っこのテーブルに座るしかない笑。
一方、テーブル席の楽しさを教えてくれるBARもある。特に外資系のホテルのBAR(正しくはバーラウンジかな)は、概ねそっちかもしれない。カウンターでは得られない「なにか」を提供してくれるからだ。ゆったりしたソファーでのくつろぎ感もいいが、そこが高層階の窓際なら、間違いなく夜景が魅力だ。
今回書くのは後者の方だ。行きたいなぁ、というような強い意志がある訳でもなく、ちょっと気軽に、少し遊ぶような気持ちで、最近しばしば使うようになった「ホテルのBAR」のハナシ。
ここは金沢駅近くのホテルのBARだ。このホテルがオープンしたのは2020年8月頃だ。コロナの渦中のオープンは、何かと大変だったのだと思う。どこのホテルでもそうだったが、営業日が変則だったりした。要するに平日はクローズ、営業するのは週末のみ、って感じだった。
ホテルの最上階にあるこのBARには、面白い特徴があった。それは、ビルなのに「屋外」にテラス席があること。そして早い時刻からオープンすることだった。つまりテラス席から「夕焼けの景色」を楽しめるのだ。最上階とは言っても14階だから、高層ビルというわけでもないのだが、オープンエアのテラス席の解放感がとてもいい。
エレベーターでフロント階へ、そしてエレベーターを乗り換えて最上階へ向かう。暗い通路を通って、やっぱり暗い店内に入る。レイアウトに特徴がある訳ではなく、窓際のカップル席も、ハイチェアの席もボックスシートもある。特徴は、左右2個所のテラス席だ。
お気に入りは右側のテラスで、方向で言えば海側の景色ということになる。ちなみに夕方の店のおすすめはシャンパンだ(シャンパンアワーと称しているみたい)。晴れた日の夕方、太陽が遠くのビル街をゆっくり沈む様を、シャンパングラスを片手に眺めるのは、ちょっといい気分だ笑。
とはいえ、雨の日はテラスをクローズするし、テラス指定の予約も取らない。冬はおそらく終日クローズだから、外の席を楽しめる季節(期間)と時間帯は限られていることになる。僕は個人的に興味があって、開業当初からホテル館内の施設を使っていた。だから、いよいよBARの営業を開始すると知って、行ってみたのが最初だ。それ以来、何度か訪ねるようになり、公式LINEでみんなに紹介したこともある。
何度も使ってしまう理由を問われても答えられないのだが、サービスはあんがい淡白で放ったらかしにしてくれるのが性に合っているのかもしれない。外資系ホテルなのに料金が手頃なのもある。
12月のある日、駅前での食事の後にも行きたくなって、家人と一緒に立ち寄った。冬だからテラスに出ることもできないのだが、それはそれだ。店内の各テーブルには小さなランタンが灯り、そこにシャンパングラスがセッティングされている。
今日のおすすめはヴーヴ・クリコだというので、久しぶりに二人で飲むことにした。つまみに頼んだのはオリーブだ。そういえば店は静かだ。いつもなら若い人たちばかりなのに、客は僕たちしか居ないのかもしれない。
テーブルのシャンパングラスにヴーヴ・クリコがそそがれ、一緒にチャームが出てきた。いつものようにビーバー(地元の北〇製菓のあれ)だ。開業のときからず~っとこれだと思う。味はスタンダードのやつなのだが、途中で一回だけカレービーバーの日があったような気もする。
ビーバー党の僕にとっては、オリーブは必要なかったかもしれない笑。シャンパン特有のきれいな泡を眺めながら、ポリポリ食べる好物(ビーバー)は、変な組み合わせに見えるのだろうが、僕にとっては最強タッグかな。