夜の浅草寺は美しかった、そして観音裏で一献
春の浅草散歩その2
ほんのちょっとだけ、のつもりだったが、長いお昼寝から目が覚めたのは6時ごろだった、もう夜じゃん笑。でも大丈夫だ、夜の予約は7時半なのでまだまだたっぷり時間がある。
ホテルから見えるスカイツリーはすでにライティングが始まったようだ。夕方の東京の空にはまだ明るさが残っていて、その深い青色の空がとてもきれいだ。マジックアワーとかブルーモーメントという、あの空ということかな。
予約した店は鶏料理の専門店だ。こう書くとお高い感じがするが、いわゆる「やきとり」の人気店で、今日はおすすめのコースを楽しむつもりだ。東京にはやきとりの名店がたくさんあるが、浅草のやきとりには妙にそそられる。
この店は「観音裏」にある。観音様(=浅草寺)の裏側、つまり北側のエリアのことで、地元の人たちが暮らし、遊ぶ街らしい。最近は「奥浅草」とも言うようだ。有名な観光地には「裏」や「奥」が必ずある気もする。僕はこういうやつに弱い笑。
夜の浅草寺~夜の飲み屋街~夜の花やしき
夕暮れとともに浅草寺もライトアップを始めたようだ。こんな時間の浅草を観るのは初めてだから、散歩しながら店へ向かうことにした。浅草寺の境内を順に歩いて、今度は夜の街をぶらぶらしてみたい。そもそも店はホテルから10分ほどの距離だから、ずいぶん遠回りになる。でもまぁ魅力的な散歩ルートに思えた。
ホテルに近い二天門から境内に入ると、いきなり本堂に出る。昼の景色とは違って光に包まれた独特の美しさだ。その左手に五重塔、そして宝蔵門(仁王門)が圧倒的な存在感で僕たちを迎える。門を抜け仲見世通りへ、そして雷門(風雷神門)へと歩いた。つまり一般の参拝ルートを逆さに歩いたことになる。浅草に来るたびに見ているはずの雷門も、今夜はやっぱり「いい面構え」に見えたりする笑。
次の散歩ルートは、伝法院通りからホッピー通りだ。さっきの仲見世通りはもう閉店間際で人も少ないのだが、こっちは凄い。昼間の喧騒がそのまま夜も続いている感じだ。どこかの店で軽く1杯ひっかけて、などと企てていたのだが、とても無理なハナシだった。
酔った仲間を支えながら歩く若者たちもいれば、子ども連れで歩く笑顔の家族もたくさんいる。まぁヤバそうな店も怖そうなおじさんもいない、そんな健全な街だ。
そんなホッピー通りも北へ進むと徐々に店が減って、一気に静かになる。せっかくだから「花やしき」を見てこようと思ったのだが、この辺りはホントに真っ暗で誰も歩いていない。ひと気のない路地はちょっと怪しげな気配に満ちていてとても興味深い笑。まぁこれも浅草の夜の顔ということなのだと思う。
●夜の浅草寺とその周辺のアルバム(右へスライド)
さぁ旨いやきとりを食べよう
地元の人たちの街というから、それなりの喧騒感があるのかと思っていたが、観音裏はホントに静かな街だった。細い小路が左右に広がっているのだが、どこも暗い。そんな中にポツンポツンと「店の明かり」が見えている。
予約した店もそんな一軒だった。ベンガラ格子の小さな外観から、中の光や声が漏れていた。なかなかいい感じだ。入るとカウンターだけの店だった。でもこのカウンターが面白い形をしていて、多少のグループ客も楽しめるように工夫されている。
店内は30~40代くらいの男女で満席だ。そんな人たちは実に上手に注文しているから、常連さんかもしくは焼鳥道を知っている人種だと思う。どうやらアタリの店のようだ。
僕たち2人は、ちょうど焼き台の真ん前の席に通された。目の前で焼き手(店主だ)の手元作業が見れるから、まぁベスポジってことだ。さっそくビールを注文し、おすすめコースがスタートした。
料理はレバーパテ、そして前菜5種盛りと続きながら、順に焼き物を仕上げていく感じだ。実は最初のレバーパテが抜群に旨い。できれば「おかわり」したいくらい絶品だ笑。最初の串は胸肉のわさび、そしてレバーだった。どちらもあえてレアに仕上げて表面の食感と部位の旨味のジュースを逃がさない。
とまぁ、書くとキリがないのだが、そんな鶏好きにはたまらない店だった。アルコールの品揃えも面白くて、僕は森伊蔵やブルゴーニュを片手に食べていた。最後の鶏ラーメンや親子丼の後も、単品で追加注文してしまう、そんな夜だった。まぁ満足だ。
●鶏料理で一献のアルバム(右へスライド)
帰り道、路地から出ると、ビルの上にスカイツリーが青く輝いていた。なにやら曜日や時間によって色が違うらしい。ホテルに戻ってからも気になって、今度は浅草寺を見下ろした。もうすぐ消灯時間を迎える境内はもとより周囲の街並みまでもが、びっくりするほど美しかった。