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2024年09月06日

知らず知らずに比較してしまう

なんか昭和っぽい、いやローカルっぽいのかな、そんな第一印象だった。香林坊アトリオの地下に登場したこの店は、とても軽装備で地味な感じの、つまり独特の世界観だった。ケーキ屋さんみたいに大型のショーケースが店頭にあるのだが、中にあるのはフルーツケーキだけで、しかも種類が少ない。
フルーツケーキと書いたが、よくあるそれとは違うし、華やかなタルトでもない。半円形のボール状で独特の形なのだ。カットされたピースもやけにでかい笑。それがこの店の代名詞の「ズコット」らしい。
適当な表現が見当たらないのだが、ここは「フルーツパーラー」かな、まぁ僕の表現も昭和っぽいけど笑。

あの「マリトッツオ」が人気スイーツのブームだった頃、業界人たちは、次のブームの候補は「ズコット」だと言っていた。でもまぁ、そんな予測が当たったためしはない。
マリトッツォは、やわらかい小さなブリオッシュ生地にたっぷりのクリームを挟んだやつで、ブームの頃は果物を加えたやつもあったと思う。SNSで映えるのがポイントだったのだそうだ。
ティラミスやパンナコッタもそうだが、そもそもはイタリア発祥のスイーツで、日本では街のケーキ屋さんというよりパン屋さんの方が頑張って品揃えしていた。ピークにはコンビニでも買えたから、覚えている人も多いと思う。
一方のズコットは、これもイタリア(トスカーナらしい)の伝統スイーツで、小型でドーム型をしたケーキだった。まるで小さなお茶碗をひっくり返した感じかな。
でも、そんな期待の星のズコットは、広がらなかったようで、つまり誰も知らない笑。人気の歴代スイーツと比較してはいけないが、今日のここのやつは、フルーツで飾ったやつで、とにかく大きくて、やっぱりちょっと昭和っぽいかなぁ。

もうすぐ晩ごはんという時間帯に、僕たち夫婦は香林坊大和へ買い物にやってきた。で、この店が出店していることを思い出して、急に入ってみたくなったのだ。食べてみたいのは、ここのフルーツパフェだ。
僕がこの店を知ったのは東京駅だ。グランスタの八重北にあって、いつも行列の人気店だ。しかも並んでいるのは女性ばかりで、こんな僕でも腰が引ける感じの店だった。それが金沢に出来るというので、ちょっと期待していた。
この日注文したのは、季節のパフェ(この日は桃のパフェ)と、定番のフルーツサンドだ。二人だから、いつもならもう1品くらいは大丈夫なのだが、さすがにズコットは大きすぎて断念した。まぁ晩ごはん前だからね。

昭和っぽいとかローカルっぽいとか書いたが、この店が東京・目黒に誕生したのは1999年のことらしいから、平成の東京生まれだった(失礼)。そもそも東京のパーラーのフルーツパフェと言えば、やっぱり資生堂パーラーとか日本橋千疋屋とか新宿高野のそれを思い出してしまう。
そんな華やかな日本代表と比較してはダメなのだが、目の前に出てきた桃のパフェは、やっぱり地味な感じの、つまり庶民的なスタイルに見える。庶民派ということが、あの八重北の行列の理由なのかもしれない。でも値段は同じくらいだと思うから決して安くない。
食べてみると、たしかに美味しい。使っているのは立派な桃だ。上の方に丸々1個、そして下にもカットした桃が詰まってる。派手さはないのだが、これはこれで直球な感じだ。フルーツサンドは、意外にボリュームたっぷりで、実は使っているクリームがとても美味しい。
遠い昔のことだが、まだ20歳前後だった僕は、香林坊の喫茶店で「フルーツサンド」を作っていたことがある。当時使っていたのは缶詰の黄桃やパイナップル、そして硬いバナナだった気がする。比較するのは失礼だけれど、今日のフルーツサンドも、なぜか青春の味がした。

この日のホントの目的は、ワインを買うことだ。地下のエノ〇カでスタッフのお兄ちゃんを捕まえて、アレコレ話し込んでいた。店頭には赤ワインが大量に並んでいて、今日は2本以上買うと2割引きらしい。やっぱり安売りには弱い。
探していたのはスペインワインなのだが、陳列の中にサッシカイアのサードラベル(レ・ディフェーゼ)があると聞かされ、ちょっと興味を持ってしまった。サッシカイアはイタリア・トスカーナの代表ワイン(スーパー・タスカン)だ。
サードラベルって、そんなモノがあるのかぁ、と初めて知ったのだが、さっきのズコットもトスカーナだから、なんとなく縁を感じて買ってみることにした。
さっきのパフェとサンドイッチでお腹いっぱいだから、僕たち老夫婦の今夜の晩ごはんは終了になってしまった。だからデパ地下の「つまみ」だけ買って、このイタリアワインでも飲もうかなぁと思う。そうそう、ズコットはまた今度だ。

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