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2020年02月28日

舌の記憶「鉄人の葛切りと鯛茶漬け」

その昔、料理の鉄人という番組があった。10年ほど続いたが、最後は視聴率も低迷したのか、知らないうちに終了していた。その10年の間に、鉄人も挑戦者も、料理人たちの知名度もポジショニングも上がり、後のスターシェフをたくさん輩出した伝説の番組だ。あまり知られていないが、地元石川県にも挑戦者がいる。当時は野々市に店を構えていたK氏だ。彼の料理はとても力強くて、すぐにファンになる力を持っていた。ある日、とある居酒屋で彼と酒を飲む機会があり、楽しいひと時を過ごしたことがある。
さて、番組終了から、再び10年くらい経ったころ、こんどはアイアンシェフというタイトルで、この名物番組が復活した。和洋中の鉄人も主催(司会者)も一新され、新しい顔ぶれでの再スタートだった。前評判も高くて、業界人の僕たちは毎週楽しみに録画を繰り返していたが、結局、視聴率は芳しくなかったのか、1年ほどで終了してしまった。新しい3人の鉄人(アイアンシェフ)はともに若く、和とか中とかという従来の枠にとらわれない、新しいスターシェフとして現在も注目されながら、それぞれの道を追求している。その一人が和食のK木(Kろぎ)氏、ひときわ若々しい料理人だ。

何年か前のある日、上野に「大人パルコ」ができたというので、行ってみることにした。正しくは「パルコヤ」という名前で、従来のPARCOとは違った路線なのだそうだ。行ってみると、場所は御徒町にあって、こんなところに?と正直思ってしまった(笑)。中を歩くと、たしかに僕たちの年齢でも手が届くショップばかりだった。だから調子に乗って、ついつい値ごろのダウンコートを買ってしまった(笑)。ちなみに8階にはレストランフロアもあって、金沢Mいもん寿司に、ものすごい行列ができていた。
そんなパルコヤの1階の路面側に、その和カフェ「K」があった。和のアイアンシェフK木氏プロデュースの店なのだそうだ。内装は「黒」(名前からの連想かな?)。とにかく壁も床もテーブルやソファーも、すべて黒や濃いグレーで統一されている。照明もアンバーで、暗くて歩けないようなレベルだ。あとから分かることだが、すべてが黒いので、出てくる食器や商品の色彩が美しく見えることは間違いない。注文した葛切りと季節のパフェは、どれも本物の素材感を生かした本格派だった。もちろん、彼が現場で作っている訳ではないから、少し雑な商品だったのは、ご愛敬だ。

ちなみに、GINZA-SIXの地階にも「Kろぎ茶々」というカウンター5席だけの小さな店がある。販売しているのはK氏の本店の名物料理「鯛茶漬け」の1品だけだ。福寿園とのコラボ店舗で、売店ではコラボ商品の和菓子が売られている。どっちも売価は高いのだが人気なのは間違いない。オープンの頃、レストランはどこも一杯で行列が付いているのに、この店だけは誰も並んでいなかった。入ろうと思ったら、和服の美人スタッフに声をかけられた。実際には5席の店に20組ぐらいの順番が付いていて、みんなコールベルを持って、買い物しながら待っているんだと言う。まぁ、そうだな。スターシェフの店だもんな。と笑うしかなかった。

和カフェ「K」 twitter.com/otona_kuriya
Kろぎ茶々 facebook.com/kurogichacha

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