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2025年01月16日

年末年始の「いらしゃいませ」いろいろ

12月が忘年会のシーズンだったのはコロナ前までのことで、最近ではホントに忘年会が減少している。昔に比べれば12月の飲食店はとても静かになってしまった、そんな嘆き節をよく耳にする。実は11月の方が忙しいくらいだ。ある種の異変と言っていい。

遠い昔の、まだ若い頃のハナシだ。業界人だった僕は、年末年始も現場に立って働いていた。やれ忘年会だ新年会だと、世の中の勤め人たちは夜の繁華街に集まって騒いだ。忘新年会とは、酒を交わし冬の幸を楽しむ「会社の行事」だった。頭にネクタイを巻いた酔っぱらいおじさんはホントにたくさんいた。
当時は年末年始を休む飲食店が多くて、営業している店は大繁盛だった。大晦日から三が日にかけては、三世代の食事会や若い人たちの同窓会などがさかんに行われた。それは現代も同じだから、減ったのは会社行事だけということかな。
とはいえ、美味しいお酒も贅沢な料理も、僕にとっては売るモノであって、食べるモノではなかった時代だ。当時の僕には、フツーの年末年始はなかったのだ。

現場にいると1日中「いらっしゃいませ~」を繰り返すことになる。店によって異なるが、その回数は1日何百回にもなる。つまり年末年始は何千回と「いらっしゃいませ」と叫ぶのだ。すると途中から「ろれつ」が回らなくなって、うまくしゃべれなくなる。
いらっしゃいませは、いつしか「っしゃいぁせ」とか「しゃせ~」になってしまうのだった笑。今ならコンビニでそんな挨拶に出会うことがある。ある意味で職業病なのだと思ったりする。
そんな僕もずいぶん前に現役を退いて、今では自由に忘新年会に参加できるし、好きなモノを好きに飲み食いできるようになった。食いしん坊の本領発揮だ。各種のいらっしゃいませも、聞く方の立場になった。
今回はそんな僕が、この年末年始に出会った「いらっしゃいませ」と、その店や料理のことをいくつか書いてみたい。

▲今年の正月のある晩、とある人気の寿司店で「らっし・せぃ」と迎えられた。入り口係のベテラン女性なのに口が回っていないのだ。昔の自分のことを思い出して少し笑った。この店の年末年始はさぞかし忙しいのだろうと思った。まだ17時過ぎなのに12組が待っていて推定待ち時間は49分らしい。やっぱりなぁ。
いわゆる廻る寿司店だが、正月のメニューには何かと高級品ばかりが目立つ。僕も三世代での来店だが、ジジババの心理を知ってるんだなぁ、と思う。ジジババは、里帰りする娘や孫には甘いのだ。上手だよなぁ。

▲この店はイタリアンだ。案外お気に入りの店だが、メニュー表記(特に食材の名前)が難しいのが難点かなぁ、でも旨いから許す笑。結局この日も「たぶんあれだ」と想像しながら注文した。写真は白子のグリルと蕪のグラタン、洋梨と水牛モッツァレラのサラダ、能登牡蠣とジャガイモのカリカリ焼き、ヤリイカのタリアテッレ(一部僕がつけた翻訳)。
ちなみに、このときは「いらっしゃいませ」ではなく、「あら~ひさしぶり~」だった。まぁそんな挨拶も嬉しいかな。
この店は家族経営だから、年末年始は長く休むらしい。ママは苗場でスキーだという。いいねぇとハナシが通じるのは互いにバブル期を知ってるからかな笑。

▲この晩は同年代のシゴト仲間との忘年会だった。ここの白子の麻婆豆腐はピカイチだからと、会場をリクエストしたのは僕だ。参加するデザイナー某からお歳暮にもらった蟹のお礼もあって、彼の好きな中華を選んだとも言える。
そんなことも話題になって、注文したのは、なぜか蟹料理ばかりになった笑。蟹は中華でも旨いけど、僕はシンプルなやつの方がいいかなぁ。
もちろん「いらっしゃいませ」と迎えられるのは同じだが、この店は中国語のイントネーションだ。「い・らっしゃいま・せ」って感じかな。どうやらアルバイトさんは全員留学生っぽい。

▲この店の板長は「あけましておめでとうございます」と迎えてくれた。直立不動の生真面目な挨拶に、僕はちょっと照れてしまう笑。この日は兄妹家族との新年会で、彼の鍋を食べにやってきた。今では懐かしいが金沢流・本格派の「寄せ鍋」だ。これが絶品なのだ。
4家族の大人数だから、好きな鍋の希望を聞いたら、牡蠣味噌とか辛いやつとか、バラバラの希望になってしまった。だから当日は、4種類の鍋がテーブルにずら~っと並ぶことになった。まぁ「鍋パ」ってことかな。シンプルな寄せ鍋は僕と家内の2人だけだった笑。こんなに旨いんだけどなぁ。
実は、昨年のこの日(1/2)にも鍋の予約をしてあったのだが、例の地震で流れてしまった。だから今年こそは食べるぞ~って感じだった。鍋のタイプはバラバラなのだが、あったかい鍋には家族の笑顔が似合うよね。

▲例外だが、師走には「おぅ、いらっしゃい」と玄関先で僕がゲストを迎える日もあった。すぐ下の弟夫婦と4人での自宅忘年会だ。ウイスキー党の弟が限定品3本を持ってきてくれた。とはいって新品ではなく弟の飲みかけだ笑。
北海道の余市蒸留所で彼が見つけたやつで、流通してない3種類の国産モルトだった。旨いと聞いて「飲ませろ」という兄貴のために、ずっと残してあったそうだ。この弟はなかなか優しい。
2人でテイスティングごっこする様は、まるでバー遊びみたいなことだ。その後はつまみを並べて珍しいビールや地酒(作の純米大吟醸)なんかを楽しんだ。つまりバーというより居酒屋という感じかな。とても楽しい夜だった。

冬は食べ物がおいしい。とくに魚貝がいいよね。旬のサカナ(蟹、鰤、白子、牡蠣などなど)を食べると、日本人でよかったなぁ、と思ったりする。まぁ最近は野菜も美味しいと思うようになったかな。
こんな年齢になると、あと何回食べれるかなぁ、などと思うことが多くなった。元気なうちに人生を謳歌しないとね。今年も頑張ろう。

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