プールサイドの三線と夕陽
座布団から始まる不思議な時間
春の沖縄ホテル滞在記その3
この宿のプールがあるエリアには、集いの館と呼ばれる施設がある。宿泊客が客室から出てきて、自由に寛ぐためのライブラリーやラウンジだ。様々なタイプのソファーやテーブルが配置されているし、フリードリンクの用意もある。客室もいいが、ここでのんびりするのも楽しい。
そしてその海側には楽しそうなホットプール(温水プール)がある。海に向かって水面が伸びるインフィニティープールだ。こっちのプールサイドも変化に富んでいて、とても楽しそうなレイアウトになっている。
・・・はて?と1枚の座布団を見つけた。館の前のウッドデッキの廊下に、なぜかポツンと、座布団(丸くてペラペラの編み込みのやつ)が1枚だけ置いてあるのだ。これは「アダン円座」とよばれる沖縄民具のひとつらしいのだが・・・・。
ということで今回は、たった1枚の、その丸い座布団から始まる不思議な時間のお話。
▲▼集いの館とホットプール(タップして右へ)
集いの館はとても楽しい場所だ。とはいえ、そろそろ夕食とか客室でくつろぐ時刻だから、人は少ない感じかな。だからとても静かな時間が流れている。
日没間際の18時頃だったと思う、女性スタッフの一人が、ガラスで仕切られた海側の扉を大きく開け始めた。すべてのガラス戸が空いて、少し涼しげな海風と一緒に、夕陽も部屋に入ってくる。
そんなとき、ドラの音?が突然響いた。それが合図かのように、奥の方から沖縄伝統衣装を身に着けた一人の女性が静々と現れた。そのまま無言で静かに廊下を進み、プールを背にして、くだんの廊下の座布団に座った。背筋がピンと伸びてきれいな姿勢だった。そのための座布団だったのだ。
僕は少し離れた場所にいたため細かなことは分からないが、どうやら手には三線(サンシン)を持っている。そして彼女は静かに演奏を始めた。歌三線かな?、おそらく伝統的な琉球音楽だろうか、静かでスローなバラードのような感じだ。
彼女の目の前のソファーブースにはシニアのカップルが座っていて、その人たちに唄で語りかけているような時間に思えた。透き通った三線の音色が、風に乗って周囲を不思議な空気感に包んでいく。
彼女の演奏はとてもクールでかっこいい。でも写真を撮るのがはばかられるような神聖な雰囲気もあって、そのカットは横顔1枚しか撮れなかった笑。
プールサイドには海に向かって並ぶソファー席がいくつかあって、そこに座ってグラスを傾けるカップルや、プールで遊ぶ女性グループがいるのだが、サンシンの旋律と同じように、静かでやすらぐ時間が流れていく。
プールの先に見える夕陽がひときわきれいだった。そういえば彼女が言ってたおすすめポイントってどこだろう?。
プールサイドにはウッドデッキや植込みの小径があって、散策路のように楽しめるから、あちこち歩きながら僕なりのベスポジを探してみることにした。時刻はちょうど日没で、遠い水平線が赤く染まって、メチャクチャきれいだった。圧巻の景色ってこういうのを言うのだろう。
沖縄の夕景には三線(サンシン)の音色が妙に似合う。この音に耳を澄まして集中すると、波の音や風の音まで聞こえてくるような不思議な気分になる。いいなぁ、こんな沖縄。