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2017年11月10日

新蕎麦と天ぷらの小話

三大〇〇とか、△△の御三家とか、まるで敬称で呼ぶように3つを選ぶのは日本人の風習なのだろうか。職業柄、レストランや飲食店、ホテルに関する質問を受けることが多い。どこかに良い〇〇はないか?とか、旨い△△はないか?とか、よく訊かれる。本音で言えば面倒くさい質問で、どれかを選んで人様に薦めるなどという恐れ多いことはできない。だから「僕が好きなのは〇〇かなあ」とか「3つ挙げるのなら・・・」という表現でお茶を濁す。やはり優劣ははっきり言ってはいけない。そんな僕が好きになった地元の蕎麦の三店が「草庵」「宮川」「竹やぶ」だ。草庵は鶴来に、宮川は別所に、竹やぶは辰口にある。草庵については、以前に編集後記で書いたことがあり、反応が良かったので、姑息にも調子に乗って蕎麦の続編を書くことにした(笑)。この三店はどれも個性があるので、その個性を楽しむことをお薦めする。個性は細部に宿る。僕の場合、通ぶって「蕎麦の香り」が・・・云々というのをやめて、堂々と素人らしく、花形の「天せいろ」つまり天ぷら付きのもりそば、を注文する。まずは2店目の「宮川」だが、ここの天ぷらは絶品だから、ほかの蕎麦を頼んで天ぷら単品を追加するのも楽しい。天ぷらの衣が極薄で、まるで軽いフライのようにサクサクしていて、三種の塩で食べると地野菜や山菜などの生命(いのち)を感じる。筍の里にあるからその時期を外して食べに行くといいと思う。三店目は「手取川竹やぶ」。ここは「竹やぶ」という血統書付きの蕎麦の名店の暖簾分けだ。竹やぶの天ぷらは、いわゆるかき揚げで、才巻海老(車エビの子ども)5~6匹を優しくくるむ様に、ひとまとめに揚げていく。表面はカリッとしていて中心部分はレアな感じのかき揚げで、芸術的な食感になる。蕎麦のつけダレも、その柚子の香りも、様式美が美しい。東南アジア系の奥さんと二人でひっそり営む日本蕎麦店は、初めての客にはとても違和感があると思う。新蕎麦は北海道産が最初に出始め、信州が出回るのは10月下旬から11月上旬だという。蕎麦は様式美と機能美を兼ね備えた日本の文化だと思う。いつかみんなを誘ってドライブがてら訪れたいと思っている。B面企画にするにはマイナーかなあ。


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