番外編の弁当箱とザッハトルテ
どうやら伊右衛門の「特茶」を買うらしい。いつものスーパーなのだが、カートを押す家内の歩行速度がやけに速い。トクチャのキメツのキャラベントー?とかなんとか謎の呪文を口にしている(笑)。何のことかよく分からないのだが、後ろを早足で追いかけるしかない。
どうやら、鬼滅のキャラクターの弁当箱が、特茶のオマケに付いていて、その売場へ一直線に向かっているようだ。なんだまた鬼滅かよ、とは思うものの、孫の願いはバアバの行動にエネルギーを与えるものらしい。箱ごと積まれた特茶の横に、6種類?の弁当箱(ランチボックスと呼ぶみたいだけど)が置いてあって、家内は孫の指定の2種類を手にして安堵していた。どうやら東京の店頭では品切れが続出していて、わざわざこんな田舎へと指令が飛んできたらしい。
会計が終わって、エコバッグの中には、いま買った特茶のペットボトルが8本と、小さな弁当箱が2個入っている。なんと、このオマケは特茶4本につき1個なのだ。これでジイジは何日間もかけて、特茶ばかりを飲むことになりそうだ。メーカーのサ〇トリーは、こんなジジババに特茶を買わせることに、見事成功しているのかもしれない。上手なマーケティングだなぁ。重いエコバッグをぶら下げて、そんなことを考えたりする。
実は、この出来事はSNS企画の「おやつウイーク」のはじめの頃で、僕にとっては番外編のようなエピソードだった。それは特茶や弁当箱のことではなく、送った「おやつの宅急便」のことだ。弁当箱の写メを娘や孫に送って、家内は楽しそうに通話している。弁当箱を東京へ送るための「ダンボール箱」に一緒に詰めるお菓子のハナシをしているようだ。リクエストの会話には「ぽたぽた焼き」とか「月よみ山路」が聞こえた。娘の希望は石川の懐かしいお菓子ばかりのようだ。
この「月よみ山路」は、栗がゴロゴロ入った蒸し羊羹だ(小松の銘菓かな)。笹の包みを開くと、大きな栗が5個ほど並んでいて、それを薄い羊羹でくるんだ「棒羊羹」ように見える。僕も久々に食べた。羊羹というより「栗」がおいしい。孫たちのパパ、つまり僕の義理の息子はいわゆる下戸(げこ)で酒は一滴も飲まない。そんな伴侶を選んだ娘は、父親のDNAを引き継いで酒飲みだから、時おり子供(僕の孫)を夫に預けて女子会へ行くらしい(笑)。
彼の好物は「あんこ」なので、その点は義父の僕と気が合っている。だから、娘の帰省のたびに、この「月よみ山路」を持たせている。彼は簡単に1本ぺろりと食べるらしい。たまに「円八のあんころ」も追加で持たせるのだが、こっちの評判は分からない。孫の成長とともに、二人の孫もこのお父さんに似て「あんこ好き」と判明した。いまでは、放っておくと土産の月よみ山路を勢いよく食べてしまうらしい。どうやら今回送るのは3本なのかもしれない。
そんな「おやつウイーク」のエピソードが、もうひとつある。弟夫婦が持ってきた「特別なザッハトルテ」のハナシだ。たまたま「洋菓子」をSNS企画のお題に掲げた土曜日、つまり、お題が空振りして投稿が全くなかった日のことだ。わが家では近所のレストランに頼んだオードブルを食卓にのせて、弟たちとのいつもの家飲み会が始まる。
迎えた玄関先で、奥さん(義妹)が大事に抱えていたのが「ホテルザッハーのザッハトルテ」だった。さっそく玄関先なのに弟夫婦の「うんちく」談議が始まった。ザッハトルテはドイツ菓子の代表のように思われていて、チョコレートがウリのケーキ店にはしばしば並ぶチョコレートケーキだ。なるほど。その本流はデメル(オーストリアのウイーンのカフェ?チョコレート専門店?)だと言われているらしい。なるほど。でも、発祥の地は同じウイーンの老舗ホテル「ホテルザッハー」で、こっちの方が正当な本物のザッハトルテだと言う。訴訟問題になるほどの事件だったらしい。なるほど。で、今回は「正当な本物」を友人たちと一緒にオンライン通販で共同購入したそうだ。なるほど。つまりこのケーキは、はるばるウイーンから海を渡ってきたのだ(笑)。
けっこう飲んだのち、立派な箱を開け、ケーキカットの儀式が始まった。ナイフを温めろとか外野はうるさいが、酔った僕はそれなりに上手に切り分けたつもりだ。ところどころチョコに指紋がついたり、チョコがめくれたのはご愛敬だ。
味はすごいのか?と問われると、酔っていた僕は返答に困るのだが、アプリコットが利いていて、これが本物のザッハトルテかぁ、などと味のヒミツを見つけるのが楽しい。まぁ値段とか「うんちく」を味わうということかな。食べきれないから、翌日も残りのやつを食べることになる。ホントは熱い珈琲が似合うのだが、濃厚なチョコレートの熱量が凄いから、僕はあの「特茶」で楽しむことになるのだろう。
そして翌日、いったん収束していた僕の「奥歯の痛み」は再発してしまい、翌週の再診でもう一度、薬をもらうハメになった。先生には言ってないが、栗やチョコがダメなのではなく、原因は酒に違いない。そんなこんなで、SNS企画には、このふたつの「おやつ」は登場していない。まぁ、こんなドタバタ劇は企画に出せるはずもない。