秘密の利き酒会?は凄かった、の小話
企画中の利き酒会の下見のつもりだったけど
開会前の第一声に驚いた。「写真はどんどん撮っていただいて構いませんが、SNSで拡散することだけは、ご容赦ください」。この時代にイベントでそんなことを言うんだ、と思った。きっと大人の事情があるのだろう。拡散するつもりはないが、すでに何人にも、このこと、しゃべっちゃったよ。ある酒屋の主人と「黒龍」の話になった時、この利き酒会の話を聞き、そっと出された案内状を見て、参加を即決した。タイトルは(少し長いのだが)黒龍酒造限定極みの酒「石田屋・仁左衛門」を飲み干す酒の会、という。会場となった人気の某寿司屋の主催で開かれるらしい、提供銘柄は石田屋、仁左衛門、黒龍八十八号、黒龍純吟三十八号、九頭龍大吟醸、の5銘柄で、四合瓶(一升瓶だと高くなる)で買っても、合計30,000円弱の限定酒ばかりだ。特に石田屋と仁左衛門(ともに四合瓶で10,000円の酒)は数量も過少で、売っている店は金沢に1軒、白山市に1軒のみ。しかし発売前に予約者だけで売り切れになる強者だ。そんな売価はマニア中のマニアしか出せないだろう、という値段だが、マニアはこの世界にも大勢いるようだ。会費は怒られそうで、とても言えない。でも黒龍の限定酒ほか5銘柄を、最低でも計三合(540ml)飲めて、人気寿司屋の懐石料理がフルコース(もちろん握り寿司付き)で食べられるので、それはそれで価値がある。
テーブルには利き酒専用の黒龍酒造オリジナルグラスや高級な冷酒グラスが何種類も並び開会を待っていた。会場には、黒龍酒造の社長が福井から駆け付け、商品ひとつひとつの説明を丁寧にしてから、まるで儀式のように、有難く口にすることになる。しかし、やはりどれも旨い。温度管理も完ぺきで抜群に旨い。どうやら「秘密に」と言っているのは、発売前日の酒が3銘柄あるかららしい。取り合いされる酒をこんな形で紹介するのも、どうか、と酒屋が心配している様子だった。我々27期の利き酒会も予定されているので、「イマドキの酒の会」はどんな感じか、と興味半分で参加したのだが、少し緊張感があって、ちょっと異質な会だった。主催者側も漏らしていたが、緊張感がないと、途中から「単なる宴会」になってしまうのだという。まあ、27期の利き酒会は、引き続き「宴会」にするので緊張感は必要ないけど。肝心の石田屋と仁左衛門だが、厳選した「もろみ」を絞る際の「あらばしり」を2年熟成したのが石田屋、まったく同じ「もろみ」の「中取り(中汲み)」を1年熟成したのが仁左衛門、つまり兄弟のような酒、ということだった。あらばしりはフレッシュで香り良く、中取りはマグロで言えばトロの部分で、味わい深く強い風味が特徴だ。有名だからそれぞれの酒を知っていたが、飲み比べなどしたこともなく、比べることで「こんなに違うんだ」と驚いた。最大の収穫は「仁左衛門」、こんな酒は飲んだことがない。思わず発売時の「取り置き」をお願いした。でも入手できる保証はない。