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2018年10月12日

BARの夜話「平均年齢60歳超の空気感」

BARでの最初の一杯は、ジントニックと決めている。かれこれ20年近くの流儀だ。BARで寛げるようになるまで20年ほどかかった。まだ若造だった最初の頃は、スコッチやバーボンを、それにまつわる小話と一緒に飲み、誰かと語るために通っていた。ギラギラしていて、夜のBARに仕事を持ち込んでいた。そんな使い方をしていた。40代になって、第2の人生をスタートしてから使い方が変わった。肩の力が抜け、ごく自然にふるまい、軽く飲んで、すぐ帰る。ようやく、そんな境地になった。そして、その頃から最初の1杯がジントニックになった。誰かが言っていた「ジントニックを飲めば、その店の格がわかる」。

日本を代表するホテル「T国ホテル東京」は巨大で、客室数は1000室弱。中に入ると「ひとつの街」を散歩するような感覚になる。食事のためのレストランだけで13店、バーやラウンジが4店もある。週末になると、シニアを中心とした宿泊客がロビーにあふれ、チェックイン時には10人くらいのフロントスタッフが横一線に並んで、予約客を迎える。まるで壮観な儀式のようだ。チャラチャラした感じはまったくなく、真面目で紳士的な雰囲気だから、僕のような人間は面食らう。今日のお題はBARなので、有名なメインバー「オールドインペリアルバー」の話にしよう。ここは旧本館を設計したフランク・ロイド・ライトの面影が随所に残ることで、長きにわたって多くのファンを魅了してきたBARの中のBARと言ってよいと思う。店内に一歩足を踏み入れると、時間がさかのぼったような感覚になる。「オーセンティック」というコトバが良く似合う。それは内装や家具だけではない。働くスタッフが皆きびきびと、しかし優雅に立ち振る舞う。全員男性で、しかも白髪が目立つシニアばかりだ。どう見ても平均年齢は60歳以上なのだが、カウンターでシェーカーを振る姿や、提供するグラスを、ピシーっと置く所作は、どれも見惚れるほど、かっこいい。働くスタッフ一人一人の中にこのホテルのポリシーが息吹き、このBARの空気感を作っているのだろう。こんなBARの酒は旨い。

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