神田明神の小さな祠(ほこら)は・・・
今日の散歩ルートは神田須田町~神田明神~御茶ノ水
そうだ、神田で「昔の味」を楽しみたい、そして神田の街を歩いてみたい。何となくだが江戸の風情が残ってる気がする。もちろん懐かしい昭和の下町グルメのイメージも広がる。
食いしん坊のサガなのだが、まぁそんなことを思いついてしまった。だから浮かんだのは、池波正太郎さんの贔屓の店だった。名前は「神田まつや」、神田の淡路町駅近くの老舗の蕎麦屋だ。さっそく公式サイトを探した(正しい住所は神田須田町らしい)。
あの食通の大作家が「神田まつやは何を食べても旨い」と評する蕎麦屋の名店なのだが、実は、うどんや丼もある庶民的な店のようだ。見つけた焼き鳥やわさびかまぼこをつまみに一杯やって、最後は夏の「すだちおろし」でしめる、そんな作戦を立てていた。
8月最後の日曜日、開店の11時を目安に着いて、ゆっくり昼酒、いやいや昼ごはんを楽しんで、そのあとは、近くの「奇跡の三角地帯」を散策するつもりだ。そこはかつて神田連雀町と呼ばれた古い繁華街で、東京大空襲の戦火を奇跡的に免れ、古き良き「神田らしさ」が残っているらしい。僕たち老夫婦に似合いそうな経路だ。
丸の内線の淡路町で降りた。神田まつやは駅の近くなので簡単に見つかった。とはいえ何か変だ、人が並んでいない。理由は単純ですぐに判明した。日曜日は定休日だったのだ笑、調べたときの僕の凡ミス(勘違い)だ。
だから言ったじゃん、隣の家内のそんな無言の非難の視線(笑)を笑顔で遮り、すぐさま目的地を「かんだやぶそば」に変更することにした。こっちはこっちで誰もが知る蕎麦の名店だ。もちろん営業してるのか確認したから、今度は大丈夫だ。
その道すがら、奇跡の三角地帯をプラプラ散策した。風格ある古い立派な建物に思わず目がいく。それは鳥すき焼きの「ぼたん」や、あんこう鍋の「いせ源」だ。ともに昭和の初期に開業した老舗らしい。いつか訪れて、そんな文化財級の空気を味わってみたい。ダメだった神田まつやも風格では負けない。まぁ食べるのはまた今度だ。
さて代打の「かんだやぶそば」だが、奇跡的にさほど待たずに入れた。とはいえ僕たちの後ろに長い列があるのはいつも通りだ。店が代わっても今日の計画に変更はない、まずは練り味噌と鴨ロースでビールだ笑。谷中生姜?の天ぷらも旨い。
仕上げの蕎麦は、夏の冷やし茄子そば、そして「せいろう」1枚に「天たね」を付けた。才巻海老のかき揚げ(ごま油の香りが利いた絶品)のことだ。実は調子に乗って、最後に蕎麦をもう1枚注文してしまった。大トリの蕎麦は「山かけそば」だ。もちろん蕎麦はどれも旨いのだが、この山芋が凄かった。まぁ大満足で、もうお腹いっぱいだ。ここは、蕎麦好きの聖地のひとつだから、ちょっと無理して食べてしまった感じかな。
●かんだやぶそばのアルバム7枚
その足で、この日の散歩の目的地「神田明神」へ向かった。神田祭で有名だが、神田だけでなく、日本橋、丸の内、築地市場、秋葉原など108町会の総氏神らしい。まぁ僕たちの世代なら銭形平次を思い出すかもしれないけど笑。
実はいま、あの別名「考察ドラマ」にハマってる。日曜夜9時のドラマ(日曜劇場?)が巻き起こしている社会現象みたいな沼の中にいる感じだ。謎や伏線のシーンが想像をかきたてる。まぁそれは僕たち夫婦だけではなく、きっと同級生の中にもそんな人がいるんじゃないかと思う。
神田明神に毎日お参りする乃木くんが、境内の小さな祠(ほこら)にちらりと視線を送るシーンがある。緊急招集のサインが「祠に赤い饅頭を置くこと」だと、後になって判明する。乃木くんの住まいも神田明神近くの古い日本家屋という設定らしい。
もうお分かりだと思うが、せっかく神田へ行くのなら、そんな「小さな祠」を探してみようか、と思ったのだ。もちろんそれはドラマ撮影の小道具だろうから、実在しないのだろうが、散歩バナシのネタになればいい、まぁそんなところだ。いつも視聴者の予想を裏切るストーリーだから「もしかしたら」のサプライズが見つかるかもしれない。
で結局、あの祠の後方の大木や朽ちた小さな竹垣を見つけてしまった驚。場所はここなのだ、でも祠は無い笑。
●神田明神のアルバム8枚
参道の入り口には、由緒ありそうな茶店?などもあって、なかなかいい雰囲気だ。手水舎の近くには神社の由来などが表示してある。江戸城から見て表鬼門にあたるこの場所に遷座して、以降は江戸総鎮守として江戸幕府や庶民を守ってきたらしい。乃木くんのオシゴトに通じるものがあるのかな笑。祀ってある神様は、あの出雲大社と同じ(大国主命)で、そういえば乃木くんのルーツは島根(出雲)だということだから、そんな裏設定を深読みしたりする笑。
ビル群に囲まれた境内には独特の神聖な空気感がある。百度石(お百度参り)横のあずま屋の風鈴の音が心地よかったりする。とはいえ古いものと新しいものが混在していて、それなりに若い参拝者が多い気もする。
僕たちのように、境内の「大きな木」を見つけて、その根元に「あの祠」を探す人は案外多いようで、根元をのぞく参拝者が何人もいる笑。ここはファンの聖地のひとつみたいなことになってるのかもしれない。まぁみんな、今夜もドラマを見て、毎回の考察の「答え合わせ」を楽しむんだと思う。
ちゃんと参拝して、散歩を続けることにした。御茶ノ水の駅まで歩くつもりだ。
●御茶ノ水まで(アルバム5枚)
参道の先には「湯島聖堂」があった。名前は知っているがどんな場所なのかは知らないから、少し敷地に入ってみることにした。徳川綱吉が建てた孔子廟で、後に幕府の学問所になった場所らしい。湯島天神と同じように合格祈願する受験生の聖地なのだそうだ。
そのまま本郷通りを歩くと向こうの方にニコライ堂の屋根が見える。そんな御茶ノ水のランドマークを目指して進み「聖橋」にでた。カメラを構えて線路を見下ろす人が多い。ここは撮り鉄くんたち聖地で、3本の路線が地上で交差する写真スポットだと思い出した。お堀の上で中央線、総武線、そして地下鉄丸の内線が交差する。たぶん3路線の車両が揃う一瞬が、撮影のタイミングなのだと思う。
少し待ってみるか?などと思ったが、炎天下の散歩で喉はカラカラだ。老夫婦には水分補給が大事だと、目の前のスタバに入ることにした。冷たくて美味しい抹茶ラテを飲みながら、乃木くんが点てる「抹茶」を思い出したりする笑。
たまたまだが今日は、それぞれジャンルの違う「聖地」と呼ばれる場所をめぐる散歩になってしまった。まぁけっこう歩いて疲れた。ふと外を見ると、急に雨が降ってきた。周囲は明るいから、これは「通り雨」かな。さて、晴れ間になったら電車で帰ろう。帰り道は少し涼しくなるはずだ。