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2023年09月15日

32階からの夜景とは言っても

そのレストランはホテルの32階にあった。予約の際には「とにかく席が取れれば御の字」みたいな気持ちだったから、そんな高層階にあると気付いたのは当日のことだ。客室へ向かうエレベーターの上の方のボタンにレストラン名が付いていた笑。
予約したのは鉄板焼きの店だった。このホテルにはたくさんのレストランがあるのだが、実は第1希望のレストラン(人気のイタリアン)は予約が取れず、この店は(僕にとっては)2番手とか3番手の店だった。予約は1か月前から、というルールがあるのだが、その「早いもの競争」に負けたのだ、仕方がない。
まずは席の確保が優先だと考えて、次に選んだのがこの鉄板焼きだ。店の人には申し訳ないのだが、そんな経緯はもちろん内緒だ。予約はすんなり取れた。この店の競争相手は少ないのかもしれない笑。
ちなみにこのホテルは、北海道の森の中(まぁ周囲は原野に近いかもしれない)にある。ホテルは30階以上あるから、車で向かう途中に「あぁあれが目的地だ」と遠くからでも見つかる。山の中の灯台みたいなものかな。

まぁどこでもそうだと思うが、高層階のレストランの魅力のひとつは景色だろうと思う。ここはディナーレストランだから「夜景」ということだ。予約時刻は19時だったから、ちょうどいい。
想像していた鉄板焼きとは違っていた。鉄板前のカウンターに座って、目の前で焼き上げる・・・、と想像していたのだが、僕たち2人が案内されたのは、大きなガラス窓に面していて、外に向けたカウンターのように横並びに座る席だった。つまり料理が後ろから出てくるスタイルだ。
もちろん、店内には4人掛けのテーブルも、グループ用のそれもあるのだが、このカウンターみたいな席は、まぁカップル専用の席という感じだ。カウンター席と書いたがテーブルの奥行きがゆっくり1mほどあって、ガラス窓の圧迫感などは全くない。
大きなメニューブックを渡され、イチオシの単品料理のこと、おすすめのコースやその内容を説明してくれる。専門的な用語などは使わず、とても気軽なトークだ。オーダーを終え、乾杯して前菜を待っていた時だった。なんか、不思議なこと(一種の違和感かな)に気付いた。

話は少し離れるが、都会の高層ビルの上階から見下ろす「夜景」は、やはり美しい。その場所がホテルなら、間違いなくウリのひとつだと思う。遠くの景色というより、街の明かりや、街灯の「光の列」が美しいのだ。都内なら首都高を走るライトがまるで「光の川」のように見える。
僕の場合は、夜景を目当てにレストランを選ぶ、なんて派手なことはしないから、せいぜいで泊まる部屋からのそれだ。例外とすればホテルのBARは概ね上層階にあるから、グラス片手に夜景を観ることはある。夜の東京タワーやレインボーブリッジはとてもきれいだ。
今までの1番は、アンダーズ東京(虎ノ門)52階のルーフトップバーかなぁ。メインのエリアは、照明がフットライトしかなくて、夜景しか見えないBARだった。まるで逆さのプラネタリウムのような気分で、星座の代わりに街を探した。
金沢にだって、高いビルはあるから、それなりに夜景を観ることができる。でもそれは都会のクールで華やかなそれとは違って、住んでる街の明かりだから、良く言えば「街のぬくもり」を感じるような光景かな笑。

さて、話をこの晩の鉄板焼きに戻そう。料理を待つ間に気付いた「違和感」のことだ。スマホで32階からの夜景を撮ろうとしたときだった。それは目の前に広がる北海道の森の景色のはずなのだが、画面にあるのは、僕たち老夫婦の2人の姿だった。
ちょうど、僕たちが「鏡」に映っている感じだ。つまり、外の景色は見えず、代わりにガラスに映る自分たちの姿しか見えないのだ笑。
理由は簡単だった。外の夜景とはいっても、北海道の森(原野)には「明かり」が全くないからだ。まぁ霧のような小雨模様だったことも影響しているかもしれない。つまり外の景色は暗くて「黒い」から、ガラスが「鏡」のようになってしまうようだ。ガラス面に接写すれば何か撮れたかもしれないが、窓まで手が届かない。
もう、笑うしかなかった。食事しながら、顔をあげると、そこに僕たちがいる訳だから、とても変な感じだ。途中からは慣れてしまったから、面白がってそんな写真を何枚か撮ることにした。こんな「自撮り」はしたことはない笑。

ちなみに食事の終盤のころ、今から敷地に花火が上がるから、店の照明を落とします、と説明を受けた。もちろん花火にカメラを向けた。花火なら撮れるなぁと思ったのだが、これも失敗した。花火の位置は、鏡に映る僕の肩あたりで、撮れた写真は僕と重なって、何やら心霊写真のようなのだ。まぁ無理して言えば、ちょっとした神秘かなぁ笑。
32階の鉄板焼きは、いたって普通のステーキハウスなのだが、ここでしか見られない大自然の神秘の夜景(ちょっと怖い)が味わえて、このようになかなか面白いのだ。

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