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2021年10月15日

友人のおすすめを思い出して

この日は、吉野谷の蕎麦屋へ向かっていた。157号線に合流したが、想像以上に交通量が少なくて、サンデードライバーに悩まされることもなく、すいすい走れた。獅子吼の空にはカラフルなパラグライダーが浮かんでいる。見上げた空は、すっきりした夏色で、今日も暑くなりそうだった。
目的地の蕎麦屋のことは、ずいぶん昔から「美味しいぞ」と聞いてはいたのだが、行ったことがなかった。ある日、若い人たちと一緒に、食べログの「蕎麦ランキング石川県」を見ていて、この店を思い出したのだった。食べログの評価ポイントを信じているわけではないのだが、蕎麦店の上位ランキングを見ると、概ね納得してしまう結果だった。
あたり前だがランキングは入れ替わっていく。10年ほど前に比べると新しい店が上位に出てきた。かつての名店でも、職人さんの世代交代があるから仕方ない。その蕎麦ベストテンの中で、唯一行ったことがなかったのがこの店だ。知っていたのに何故か行かなかったのだ。とはいえ、いまだに上位に名前があるのは、相当の実力と人気があるからだ。がぜん興味が湧いた。

ようやく吉野谷に入った。ナビによると、こんな狭い道を左折して、昔からの在所の中に入るらしい。さらに狭い角を曲がったところに、この店、そば処「H川」の看板を見つけた。とはいえ普通の民家だ。しかも周囲の民家がみんな古いから、むしろ新しい家に見える(笑)。
4台しかない駐車場は埋まっていたので、店に入り、停める場所を訪ねることにした。出てきたのは高齢のおばあちゃんで、満席になったから無理だ、時間がかかるぞ、1時間くらいかな、などと、けんもほろろな回答だ(笑)。車4台で満席になるのは不思議だから、いいよ、1時間ね、待つよ、などと返したら、じゃあ、ここで待ってろ、と椅子が出てきた(笑)。結局、席はすぐに空き、僕たちは待つこともなく蕎麦にありつけた。
ちなみに、ここはまるで飲食店には見えない。普通の家の部屋のふすまを外した座敷が客席で、普通の台所が厨房のようだ。辛口のおばあちゃんは、ここの主(ぬし)のように貫禄があるが、ちゃんとお化粧をしていて、エプロン姿がちょっとかわいい。

蕎麦を注文すると、なぜが「お通し」が出てくる。少量だが、まさに田舎の山菜料理3品だ。これが素朴で美味しい。注文した〇食限定の「御膳そば」はいわゆる更科で香りも喉越しも最高だった。「山菜たぬき」は名前の通り山菜と天かすが乗った冷やしぶっかけで、想像よりはるかに旨い。
追加で頼んだ「きのこ」の小鉢は、お通しの3品と同じように、山の野趣を感じる旨さがある、いいなぁ。このところ磨かれた現代風の蕎麦を食べるのが多かったから、こんな懐かしい味にホッとしていた。最後の蕎麦湯には、蕎麦の実の「そば粥」が添えられていて感動ものだった。
帰り道に、かつて、この店を僕に教えてくれた友人たちのことを思い出した。独立した頃、もともと仕事人間だった僕には趣味みたいなものがなくて、休日の過ごし方もぎこちなかった頃だ。そんなころ、この157号線沿いの立ち寄りスポットや、蕎麦の楽しさを教えてくれた友人が二人いる。一人からは、このH川を教わり、もう一人からは鶴来のS庵を教わった。そういえばS庵は、今でも蕎麦べストテンの1位に君臨している。二人のことをきっかけにして、色々な当時のことを思い出していた。感謝しなきゃなぁ。

帰り道には、そんな二人に教わった遊びのスポットに立ち寄ることにした。かつて何回も訪ねた場所ばかりだが、この日は少し新鮮な気がした。吉野工芸の里の、あの場違いな「近代的なトイレ」は、今もエアコンが効いていて快適だったし、山法師の大判焼きは相変わらず旨かった。新しいオートキャンプ場は大人気だ。めおと岩温泉や向かいのガレリアも懐かしい。河内地場産業センターの直売所には、いつの間にかカフェができて人気だった。そういえば鶴来の道の駅には「Aげあげ屋」という看板が掲げられて、厚揚げのレストラン?が出現したようだ。
ただ蕎麦を食べに行っただけなのに、あちこちでクルマを停めて、色んなことを思い出したり、新しい発見にウキウキするドライブになった。ご無沙汰している友人たちに連絡しようと思いはじめた。

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