toggle
2025年07月20日

昔は昭和の飲み屋街、今は優しいおにぎりの街

朝の大塚、レトロな荒川線
梅雨の晴れ間の東京散歩
ここは山手線の大塚駅だ・・・と聞いても、たぶん誰もが「どこだっけ?」と反応すると思う。そんな目立たない駅なのは間違いないかな。かつて花街があったらしいのだが、僕にとっての大塚も地味な印象しかない。
ちなみに、今では日本酒の聖地として若者に知られているらしい。初心者から愛好家まで、日本酒好きなら納得の居酒屋がたくさんある街なのだそうだ。まるで僕のための街なのかも、などとその気になってアレコレ調べてみたりする。たしかに「名酒場」というキラーワードに僕は弱い。
山手線の大塚駅は池袋の隣にある。その駅裏(北口)にお気に入りのホテルがあって、この数年のあいだに何度も大塚に泊っている。新宿とか中央線の沿線とか、つまり西の方に向かうには、あんがい便利な場所なのだ。今回は所沢へ向かうから、宿は迷うことなくここに決めた。
何度も使っているなら、大塚に詳しいのかと言えば、全くそんなことはない。実はほとんど知らない街のままだ。日本酒の聖地だと知って、がぜん興味が湧いて調べてはみたのだが、う~ん、結局どの店にもあんまり興味が持てなかった。まぁそんなこともある。

今の大塚で一番話題なのは、おにぎりの「ぼんご」だと思う。いつも行列が絶えることがない人気店だ。店主の人柄のような「ふわりと握った優しいおにぎり」は66年にわたって、この街で愛され、テレビやSNSで一気にブレイクした。
この日の朝、僕はいつものようにフロント階(3階)のテラスから、珈琲片手に朝の街を眺めていた。チンチンチンという踏切の音とともに、テラスの真下を、たった1両の電車が、右から左からと何回も通っていく。都電の荒川線だ。朝のラッシュが始まったのだと思う。
今のぼんごは、その踏切の真ん前にある。もちろんまだ開店前だが、見ていると玄関から一人のスタッフが店頭に出てきた。ビニール袋とハサミをもって、道に落ちているゴミを拾っているようだ。ん?っと疑問に思った。ずいぶん道の遠くまで延々とゴミ拾いが続くのだ。
しかも、こっちの道が終わればあっちと、拾う範囲は結構広い。自分の店の前だけではなく、地域の道をきれいにする姿勢なんだと思う。なるほどなぁ、地域に愛されるというのはこういうことなんだろうなぁ。昭和ジジイは、そんな光景を見ていて優しい気持ちになる。

優しいといえば、やっぱり荒川線かな。山手線や地下鉄とは違って、車窓から見る街の景色が目に優しい。たった1両の小さな車両が、昭和の雰囲気を守っているような気がする。ちなみに路線図にはサクラとバラが楽しめる沿線脇のスポットが記載されている。その時期になれば車窓からの花々が楽しめる趣向かな。
この日の夕方、宿に戻った僕たちは、これから予約をとった神楽坂へ向かうのだが、わざと荒川線を使うことにした。たった2駅で乗り換えるだけの遠回りだが、それで十分だった。
向かう道すがら、今度は夕方の「ぼんご」を覗いたりしながら、大塚駅前をちょっとぶらぶらしていた。そして停車場にちょうど入線してきた電車に飛び乗った。・・・で、失敗したのだ。反対方向の電車に乗ってしまった笑。
もちろんUターンしようと、次の駅で下車した。そこは「巣鴨新田」という知らない駅なのだが、素朴な街の風景に夕陽が映えて、やっぱりここでも優しい気持ちに浸ることができた。

余談だが、大塚駅前のビルの下に一軒の本屋があった。何気なく覗いたら「ぼんご」のコーナーがあった。どうやら、あの女将さんが本を出したらしい。そして驚いたのは、そのビルのガラス窓にそのPRポスターが何枚も横一列に貼られていた。明らかに全力応援態勢だ笑。
地域に愛されるお店は、その住民たちにも支えられるってことだと思う。ちなみにポスターの女将さんの笑顔は、たしかに人をほっとさせるチカラがある。
後から調べたら、本のタイトルは「ぼんごのおにぎり おいしさのヒミツ 」というらしい。一種のレシピ本ということかな、とってもストレートなネーミングだ。愛情あふれるおにぎりかぁ・・・いいよね。

Other information