朝の散歩と39階のフレンチトースト
やけに喉が渇いて、薄目を開けた。ちょっと頭痛もするかな。なにやら、ぼぉ~としていて、爽やかな朝とは程遠い。願望では、気持ちがいいこのベッドで贅沢な朝を迎えるはずだった。悪いのは昨晩の酒だ。ジジイは調子に乗ってはいけない笑。
カーテンを開けると、明るい日差しが飛び込んできた。今日もいい天気だ。ベッドサイドにホテル周辺のジョギングコースのガイドを見つけて手に取った。大手町のこのホテルから日本武道館や千鳥ヶ淵、そして皇居周辺のコースなどを提案する地図みたいなやつだ。
でも、その距離を見て断念した。どれも5kmほどある。僕にはジョギングの趣味はない。僕がやりたいのは老人の朝の散歩だから、ジョギングコースに意味はないのだが、まぁこれを参考に歩いてみようと思う。
ホテルの朝は静かだった。昨日の昼のラウンジは、アフタヌーンティーを楽しむ若い女性たちでにぎわっていた。そんな喧騒がウソのようだ。専用エレベータで下界へ降りていった。1階レセプションの若いスタッフが笑顔で声を掛けてくる。さぁ散歩だ。
大手町は日本経済の中心地、つまり屈指のビジネス街だ。メトロの出入り口から出勤する人たちには、それなりのリズムがあって、僕は早足でその流れに乗るような感じで歩き始めた。周囲はビルが立ち並んでいるが、そこに将門塚がポツンとあったりして不思議な気もする。
それにしても、このあたりの街路樹も歩道もホントにきれいに整備されていて気持ちいい。ちょっとしたドッグランもある、オフィス街なのに誰が使うんだろうなぁ笑。
皇居の前には消防署があった。その隊員たちが表に出てきて朝礼?をしている。体格のいい制服姿の彼らは姿勢も動作も何となくかっこいい。朝らしい風景ってことだね。
ゆっくり歩いて、あちこち回って、ビルのエントランスに戻ってきた。こんな朝なのに、やたら黒塗りの高級車が次々に入ってくる。誰か偉い人でも泊っているのかな、と思ったが、そうではなかった。
ホテルが入居しているこのビルはいわゆるツインタワーなのだが、どうやら三井物産の社屋らしい。ホテルではなくお仕事の方々ということだと思う。なるほど、そうなら黒塗りのリムジンが似合うわけだ。
おなかを減らして食べるホテルの朝食は、僕が大好きな旅のひとときだ。39階のイタリアン?だが、この日の朝食はアメリカンブレックファストを選んだ。いろんな卵料理が選択できるから、あれこれ目移りするのも嬉しい笑。
普段なら当たり前の目玉焼きやベーコンは、焼き方などをこまめに選んだりするのがちょっとした楽しみだ。同じようにパンだって外資系ホテルのやつはどうしてこんなに旨いんだろう、などと思ったりする。アメリカンというくらいだから、アメリカ人は変なところにこだわるものらしい。
単なる卵料理とは言え、あんがい迷ってしまう。まぁ普段と違ったやつがいいかなと、珍しくフレンチトーストを選択した。
カナダ発のホテルで、店はイタリアン(伊)、スタイルはアメリカン(米国)、そして食べるのはフレンチトースト(仏)っていうのも、アメリカ人らしい発想なのかな。まぁ食いしん坊には大歓迎だけど。
ホテルの珈琲は、やっぱり旨いなぁ、と唸ってしまう。珈琲好きな僕にはたまらない瞬間かな。そしてテーブルまで運ばれるバスケットから、好きなベーカリーを選ぶ。
サラダ替わりの小さなフルーツボウルには8種類くらいの果物が盛り付けてある。オレンジのピューレを浮かべたヨーグルトは抜群に旨いのだが、そこに果物を放り込んで子供のようにパクついたりしていた。
もちろん料理に添えられたソテーや2種類のソーセージがとにかく抜群に旨い。そして、驚いたのはフレンチトーストだ。数年前に大ブレイクしていた頃、あちこちの専門店で食べてきたのだが、間違いなくダントツ1位だった。なるほど、ちゃんとした卵料理ってことなのだ。
それは流行りの、つまり自称専門店の個性的なやつじゃない。むしろあくまでオーソドックスなそれなのだが、王道の凄さと言うことなのだろう。大げさだが、食いしん坊の僕にとっては、この旅イチバンの収穫かもしれないな笑。
このホテル fourseasons.com/jp/otemachi/