本の時間「思わず買ってしまう新装本」
ジャケ買いした3冊のハナシ
読み終わった文庫本(数冊)を手に取ったときに、あらためて気付いた。最近買って読んでた小説はどれも、いわゆる「新装版」ってやつばかりなのだ。
新装版(僕の場合は文庫本)というのは、ようするに古い小説で、その内容は変えずに、装丁(まぁ表紙デザインかな)を変えて再発売された書籍ってことらしい(いわゆる改訂版とは少し意味が違う)。
何らかの狙いやきっかけがあって、再発売されるわけだから、これは立派な出版社の作戦なのだと思う。書店の方も心得ていて目立つように平積みにする。つまり新しいジャケット(表紙)が並ぶ。ようするにある種の販売テクニックかな。
だから僕は、そんな作戦にたびたび引っかかって、思わずジャケ買いしてる読者ってことだ。書籍に限らず様々な製品の「ジャケット」のデザインは売れ行きを左右する大事な広告なんだと思う。
今回の「本の時間」は、そんな新装本3冊のハナシだ。いま話題のあれだねってやつも、お~懐かしいなぁってやつも、ほ~知らなかったってやつもある。

殺菌には日の光に晒すのが一番だそうだ
この本のことを、というより「あの人」のことは皆んなご存知だと思う。たぶんだが、すでに忘れていたのにテレビやネットで最近話題になってて、思い出した・・・まぁそんな感じだと思う。僕もまさにそれだ。
話題作を次々にリリースする、あのストリーミングメディアの新作ドラマ、その一連の広告にどこかで触れているからだと思う。
この本は(たぶん)メディアミックスのひとつとして(新装版で)出版されたのだと思う。たしかに広告用の表紙ジャケットはすげ~目立つ。とはいえ原作本ではないしノベライズでもないようだ。表紙には大きく「参考文献」と書かれている。
作者のM口さんは、組織犯罪(いわゆる日本のヤクザ)関連の書籍で有名なノンフィクション作家(ジャーナリスト)だ。本作は週刊誌のシリーズ記事をまとめたものらしい(当時メディアにもてはやされた「あの人」の実像をルポした内容)。
まぁ、おすすめしたい本ではないが、読みごたえがあるノンフィクション作品だった。ちなみに上記の「殺菌には日の光に~」は、作者が引用したコトバ(米最高裁判事の言葉)でとても印象的な一文だ。

あの古いスクーターを探して
書店で本作を発見したとき、お~懐かしいやつを見つけた~、と喜んだ。あのテレビドラマの原作本?だと思ったからだ。故・M田優作さん主演のこの人気ドラマは、1979年らしいからもう半世紀前のことだが、今でもぼんやりシーンが浮かんだりする。
なぜか主人公が乗っていたスクーターを思い出して、気になって調べたら「ベスパP150X」というイタリア製?のやつだった。まだ読んでない段階なのに、暇なじいさんはこんなとき熱心になる笑。
巻末の解説によれば、本作は原作小説ではなかった。とはいえ、テレビドラマの制作(企画打合せ)の途中で生まれたらしい。つまり企画スタッフの一人が同時進行で執筆を開始したのだそうだ。
主人公やいくつかの設定は共通するのだが、全くのアナザーストーリーだ。だからノベライズでもない。
テレビドラマは軽妙なハードボイルド・タッチのコミック・ミステリ、本作(小説)は正統派の純ハードボイルド作品、そんな違いなのだそうだ。ちなみに同じ主人公だが、小説版で乗っているのは、ベスパではなく中古のスカイラインだったりする。テレビはテレビ的ってことかな。違うストーリー、違うテイストなのだが、この小説はエンターテイメントとしてとても面白い。
そもそも、今年の春に彼の息子(M田龍平くん)の探偵ドラマ?を見ていて、その父親の彼の遺作(このドラマ)を思い出したばかりだった。もしかすると今回の(小説の)発売と関係あるのかもしれないな。

暗殺は歴史に寄与したのか、否
最後の1冊はS馬遼太郎さんの作品だ。僕のような昭和的な爺さんにとっては、ときどき読みたくなる日本史の側面ってことかな。明治維新は近世と近代の「境目」ってことだ。境目は何かと興味深い。とはいえ、これはあくまで小説だと理解しなくてはならない。
オビの裏書によれば、本作は「大老井伊直弼の襲撃から始まる幕末狂瀾の時代を12の暗殺事件で描く連作小説」だ。つまり暗殺のハナシが12個も続く短編集ということかな。でも、あんまり有名な本ではないと思う(失礼)。
当時の暗殺ということだから実行者たちによる「天誅」というやつかなぁ。イメージでいえば動機は政治思想のはずだが、本作に出てくるきっかけは、暗殺者たち個人の義理だとか功名心のような寒々とした動機ばかりに思える。
だから作者は、暗殺者を主人公にするのではなく、その時代つまり幕末という「時代のムード」を主人公にしたような気もする。ここから始まる「境目」には血の匂いが付きまとう。読むとしばらく食欲がなくなる。まぁ読まなくてもよかったかもしれないな笑。
さて、本作は典型的な新装版だと思う。なにせ本作(文庫版)が刊行されたのは1977年で、この新装版も2001年初版らしい。大昔のことは分からないが旧仮名遣いも多かったはずだから、改定版という意味合いが強かったかもしれないな。

そういえば、この春に広島・鞆の浦の「いろは丸展示館」に立ち寄った。簡単に言えば坂本龍馬の記念館みたいなところだ。有名なハナシだからあの衝突・沈没事故の概要は省くが、紀州藩との交渉の地が鞆の浦だったから、龍馬が街に滞在していたらしい。
館内には、関連する展示物が並ぶのだが、そこに「龍馬の隠し部屋」とかもあって、マネキンの龍馬が見学者を迎えてくれる笑。そんな展示物の中に、彼のピストル(レプリカ)が展示されていた。暗殺(襲撃)を恐れて彼が持ち歩いていた拳銃だ。
本作の12の暗殺物語の中には、暗殺された龍馬にまつわるページ(一種の後日談かな)もあったから、展示品を見ながら「ピストルと龍馬」のことを思い出していた。
ちなみに、あの寺田屋事件の際に、龍馬はピストルを使って脱出したと言われているが、使えずに捨てたという説もあるそうだ。小説やドラマなら派手に使ってほしいのだろうが、ホントはどっちなんだろうね。









