ホテルの時間「グランピングが面白い・後編」
グランピングというのは、グラマラス・キャンピングという造語だという。優雅で贅沢なキャンプ・スタイル?というような意味なのかもしれない。大自然の中にいると、この豊かな時間が一番の贅沢なんだと納得する。そろそろ夕食の時間だ。キャビンを後に、散策路を進んでダイニングに向かう。
夕食が、これまた面白い。広いダイニングには、多くのテーブルが並び、その中央に丸いオープンキッチンがある。そこでは大型の炭火グリルでメインのステーキを焼いている。そのグリルの炎が見える。テーブルに着き、メインの肉を選び、地元のビールで食事のスタートだ。小さなバケツのような形をした食器?が運ばれてきた。バケツの中には前菜が1品ずつ入っていて、そのバケツ?を6個テーブルに並べていく。バケツのなかの料理を食べる、などというのは、もちろん初めてのことだ(笑)。畑とか農作業をイメージさせる演出なのかな?。
そうこうしているうちに、カメラを持って、中央のオープンキッチンまで一緒に行こう、とスタッフに誘われた。中央のカウンターでは、シェフが、さっき僕がオーダーした肉を目の前に出して確認し、塩を振り、大型の炭火のグリルの上に乗せてくれる。どうやら「シェフと一緒に自分のステーキを焼こう」というスタイルらしい。
目の前で分厚い肉が焼け、香ばしい匂いや、肉汁にそそられる。さらに大きなBBQトングを渡され、それで、このステーキを自分でひっくり返せと言う。ちゃんとひっくり返すと、ステーキ独特の十字の焼き目がつくのだが、角度を間違えると、失敗になる(笑)。最後はカメラのスタンバイだという。最後の仕上げに、目の前でフランベ(ブランデーの炎で香り付け)するので、大きな炎が上がった時がベストショットの撮影チャンスみたいだ。最後にグラタンやポテトのガロニを好きなだけ取って、自分のステーキをテーブルに運ぶ。遊びながらの食事は、たしかにキャンプの醍醐味だ。
この日は、室内のレストランを選んだのだが、これとは別に、クラウドテラスの横で、つまり屋外で、シェフが作る「ダッチオーブン・ディナー」というスタイルも選択できる。焚火で作るオーブン料理のコースということらしい。次回はそっちにしよう。いずれにしても、落ち着きのない、ガヤガヤとした楽しみ方が、とても面白い。
食後は、すっかり陽も落ちていて、懐中電灯を片手にクラウドテラスへ向かう。テラスのライブラリーには、コーヒーやワインなどが置いてあり、自由に飲むことができる。熾火(おきび)になった焚火を囲んで、ゆっくり食後の時間を楽しむ宿泊客が、順にやってくる。ガムラン?のような楽器をあやつるアーティストがいて、静かに演奏を始めた。なぜかこの景色に溶け込んでいるように思えた。グランピングの夜は、とても静かだ。
翌朝の朝食はルームサービスにした。スタッフが運んできたのは、ピクニック・バスケットに詰め込まれた朝食だった。サラダ、焼きたてのパン、キッシュ、そして保温ポットに入った珈琲だ。それを外のテラスで食べる。朝ごはんもキャンプスタイルなのには、おそれいった。そのテラスからは、真正面に河口湖、そして今日も、くっきりと大きな富士山が見える。こんな贅沢な朝食は、まあ、たしかに体験できないなあ。グランピングは面白い。香り良いパンを頬張りながら、B面企画の「大人のキャンプ」をイメージしていた。近隣にはこんなに充実したホテルはないし、料理も自分たちで作ることになる。だから、どうせなら27期らしくアイデア満載の企画にしよう、と一人ほくそ笑んでいた。
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