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2018年11月02日

ホテルの時間「グランピングが面白い・前編」

富士急行の河口湖駅で下車した。外国人も含めてたくさんの人であふれている。タクシーの運転手に目的地の宿の名前を告げると、僕の名前を尋ねられる。不思議に思いながら氏名を告げると、無線でそれを本部に伝える。どうやら予約客が向かっていることを、本部から宿に知らせているのだろう。タクシーは、河口湖の湖岸の道路から右の山手に向かい、林を抜け、右に左にさらに進む。そこに、ぽつんとその宿のレセプションが立っている。周囲とは違う存在感で、ガラス張りの瀟洒な建物はブティックやカフェに見える。スタッフが外へ出てきて、僕の名前を呼びながら笑顔で迎えてくれる。レセプションの壁一面に「リュック」が大量にディスプレイされている。その中から好きなデザインのリュックを選ぶ。この中には、双眼鏡や水筒、ライトなど、この旅で使う「7つ道具」が入っていて、冒頭から、ちょっとワクワクする感じだ。簡単なガイダンスの後、真っ赤なジープが用意され、急な坂をグングン上って、滞在エリアまで連れて行ってくれる。

今日の宿「Hのや富士」は「グランピング」をテーマにしたホテルだ。敷地は広大で、河口湖を見下ろせる山の急な斜面に、宿泊施設やフロント棟など、すべての施設が建てられている。そして河口湖の向こうには、大きく、くっきりと富士山がそびえている。まさに絶景のポイントにある。フロント棟から、宿泊する「キャビン」のエリアまで、150段ほどの階段を下りていく。花や草木をぬって降りる途中、何度も「富士山のビューポイント」が出てくる。スタッフによれば、この日は珍しく、雲もかからない、キレイな富士山に出会うことができたらしい。

キャビンと呼ぶのは、宿泊する部屋が全て独立していて、全てコンパクトだからだ。おそらく30㎡ほどしかない。確かに大型のヴィラやコテージとは違う。キャンプのテントと同じように玄関もないので、その場で靴を脱いで上がり込む(笑)。しかしベッドやバス、リネンなどの機能や品質は高級ホテルレベルだ。すべてのキャビンから富士山が見える。さらに部屋の外に大きなテラスがあり、昼はデイベッド昼寝ができる。夜はここで、小さな焚火を囲んで酒を飲めるようだ。

チェックインの後は敷地内を散策する時間だ。キャビンから、さっきのフロント棟まで150段を上る、そして、さらに今度は180段の階段を上ると、宿自慢の施設「クラウドテラス」がある。階段を上るだけなら大変なのだが、途中にハンモックの広場があったり、ヨガテラスと呼ばれるスペースがあったり、デザインされた休憩テントやソファーが、ふんだんに設置されていて、330段が辛いどころか、寄り道しながら、楽しみながら、ワクワクしながら登っていける。

クラウドテラスは、名前の通り山の頂上部分に作られた広い施設で、大型の焚火を中心に、何層ものウッドデッキがあって、さらにキャンプを想起させる大型テントが、いくつも設置されている。いずれもが個室のように自由に休憩に使えるようだ。最上部のデッキはラウンジになっていて、備え付けのコーヒーや小菓子を自由に楽しめる。その真ん中の大きな焚火では、暖をとるだけでなく、マシュマロなどを焼いて自由に楽しめる。

時刻はちょうど15時、ウエルカムスイーツの時間だ。テラスにバーがセットされた。キャンプスタイルでミルクティーやホットワインが用意され、ワッフルやマシュマロ、果物などを焚火で焼きながら、自由に楽しむ。

グランピングの宿は、何かと楽しい。リゾートホテルの快適さを保持したまま、森で深呼吸し、焚火を囲みながら、上質なキャンプ気分を味わえる。狭いテントの寝袋も楽しいのだろうが、快適なキャビンの上質なベッドは、やはり魅力的だ。夕食まで、もう少し時間がある。迷路のような森の散策路を歩いて、少しでもお腹を減らさないと。(後編へつづく)

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