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2021年10月22日

カエルの断末魔

週末からの3連休を控えたある日のこと、もうすぐ天候が崩れるからだろうか、裏の田んぼで稲刈りが急に始まった。とはいえ、大きな機械(農機)が入って、あっという間に終わっていく。さっきまで緑の稲穂でいっぱいだった田んぼは、茶色の切り株の列になってしまった。
稲刈りの風景といえば、つい何年か前までは、天気のいい日に何人もの人が集まって、ワイワイ楽しそうにやっていた記憶があるのだが、今はもうそんなことは必要ないようだ。まぁ現代の稲刈りの風景はこんな感じなのだろう。
それにしても、あの稲刈り後の独特のワラの臭いはいい感じだ。機械が別の田んぼに移動すると、刈り取られた田んぼに様々な鳥たちが一斉に集まってくる。カラスやスズメや、名前は知らないがムクドリ?みたいなやつが大勢で押しかけてくる。白とかグレーのサギも飛んできた。稲穂の切りくずあたりが目当てのような気もして、微笑ましい風景にも見えるが、もしかするとカエルとか昆虫とかを食べに集まるのかもしれない。彼らに食べられまいと飛び跳ねるカエルの姿が浮かんで、ちょっと気の毒な気もする(笑)。

このところ「左腕」を動かすと痛くなってきた。正確に言えば、左の肩が痛くて、左腕がうまく動かせないのだ。どうやらまた、あの五十肩(肩関節周囲炎)かもしれない。ちょうど1年ほど前に右腕(右の肩)が発症して、えらい目にあったことを思い出した。今度は左かぁ、まぁあの時の学習からすると、グズグズすればひどいことになる。そしてあの注射のことも思い出した。信じられないほど痛い、あれのことだ(笑)。だからなんとか連休の前に治療しておかなければならない。
手元の診察カードによれば、行こうとした木曜日は休診日だったので、翌日の金曜日にようやく、いつもの整形外科を訪ねた。ところが、玄関の貼り紙に驚いた。「コロナのためしばらく休診中」と書いてある(笑)。そんなことがあるのか?、とは思ったがジタバタしても仕方ないと諦めた。明日から3連休だが、この段階では痛いとはいえまだ我慢できたからだ。

五十肩で苦労した同級生も多いはずだからご存知だろうと思うが、人間は左右の腕を、それなりに交互に使って暮らしているのだ。利き腕ではなくても、左腕が痛くて使えないと、ものすごく困ることになる(笑)。夜中には、痛さに驚いて目が覚める。朝になっても着替えができない。まぁ一日中そんな感じだ。家内は手伝おうか?などと笑うのだが、意地になって一人でやることにした。
で、結局、3連休は左腕の激痛と一緒に過ごすハメになった。ついに左腕が動かせなくなり、天気はいいのにどこへも行けない。あの整形外科を恨んでも仕方ないのだが、僕の3連休を返せ、と言いたくなった(笑)。
連休が終わった火曜日、激痛のまま別の(第二の)整形外科を訪ねた。連休のあいだに探した新しい整形外科なのだが、悲しいことに、この日は臨時休業していた。こっちは院長が濃厚接触者?、まるでB級ドラマの展開だった。そして、僕は古い(第三の)整形外科でようやく治療することができた。

ちなみに、この激痛の連休のあいだ、僕が一番苦労したのは「目薬」だった。眼科の指導で3種類の目薬を何回も点さなければならない。点眼が下手な僕は、実は左手の指で瞼(まぶた)を広げないと点せない。僕の場合はどうしても左腕を使わないとできないのだ。
痛みに耐えながら、何度か失敗を重ね、痛い左腕をちゃんと使って点せる方法を、ようやく開発した(笑)。居間の本棚の横板がちょうど「脇の高さ」なので、そこにそ~っと痛い左腕を乗せて固定するのだ。すると目の高さに左手がくるので、なんとか瞼を開くこと(アッカンベーだけど)ができる。
でもまぁ、僕のその涙ぐましい態勢を想像して欲しい。壁の本棚に、一人のおっさんが、腹をくっつけて立っている姿だ。右手に目薬の容器を持ち、左腕の肘を本棚に掛けてアッカンベーして、天井を向いて反り返っている。高さの調整は両足をガニ股にして頑張る。
そうだ、その態勢は、ガラス窓にくっつくカエルの姿そのものなのだ。もう笑うしかない。しかし頑張りすぎて力むと、固定した左腕がズレてしまって激痛が襲う。キエ~という奇声を発して反り返ったまま、しばらく動けなくなる(笑)。
そんな姿はきっと、あの田んぼのカエルが鳥のくちばしに襲われて、両手両足を広げて反り返る、そんな断末魔の姿と同じに違いない。

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